-->新型コロナウイルス感染症に対する創薬と薬効化学の取り組みについての総説(2020年5月) | STELLANEWS.LIFE
サイトアイコン STELLANEWS.LIFE

新型コロナウイルス感染症に対する創薬と薬効化学の取り組みについての総説(2020年5月)

新型コロナウイルス感染症に対する創薬と薬効化学の取り組みについての総説(2020年5月)。

ヒトに病気を引き起こすコロナウイルスは、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器ウイルスコロナウイルス(MERS-CoV)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の 7種類が知られていると説明。

最後の3種類のコロナウイルスは高病原性で、致死的な呼吸器疾患を引き起こす伝染性の集団発生につながっていると指摘する。

SARS-CoVは2002年11月に中国の広東省で初めて報告。8000人以上が感染、約 774人が死亡し、死亡率は10%となったとする。

MERS-CoVは2012年にサウジアラビアで初めて検出。新型コロナウイルス感染症につながるSARS-CoV-2の発生は、最も深刻な公衆衛生上の緊急事態に発展したとする。

コロナウイルスは、長さ約30kbの既知の最大のRNAゲノムを持ち、2つの重なり合うオープンリーディングフレーム(ORF)をコードし、それが2つのポリタンパク質であるpp1aとpp1abに翻訳されると説明。

ポリタンパク質はさらに処理され、4つの構造タンパク質と16の非構造タンパク質(nsps)を生成すると解説する。

コロナウイルス複製酵素ポリプロテインは、2つのシステインプロテアーゼ、パパイン様プロテアーゼ(PLpro)とキモトリプシン様プロテアーゼ(3CLpro)によって処理される。PLproと3CLproによる16のnspのタンパク質分解処理は複製に関与し、ウイルスの複製とゲノム転写に不可欠になる。それぞれのX線構造が、構造に基づいた創薬利用できるようになったと説明する。

3CLproおよびPLproの阻害剤としての低分子ペプチド、ペプチドミメティクスおよび低分子の同定が進められてきた。ウイルスの複製や病原性を低下させる抗ウイルス薬の開発にとって魅力的なターゲットであると指摘する。

日本の研究グループが2009年にSARS-CoV 3CLpro阻害剤として、トリフルオロメチル、ベンゾチアゾリル、チアゾリルケトンを含む一連のペプチド模倣化合物を開発したと報告。

さまざまな形態の3CLpro阻害薬の開発が進んでいる。α-ケトアミド3CLpro阻害剤、基質類似のアザペプチドエポキシド、低分子共有結合型3CLpro阻害剤、共有結合型3CLpro阻害剤としてのベンゾトリアゾールエステル、共有結合型3CLpro阻害剤としてのハロピリジニルエステル、共有結合型インドールベースの3CLpro阻害剤、非共有結合型3CLpro阻害剤、天然由来の3CLpro阻害剤など。

一連の天然化合物もまた、PLpro阻害剤として同定されていると説明。2012年、7種類のタンシノンを用いてSARS-CoV PLproの酵素阻害剤複合体の異性化と共有結合による阻害が関与していると考えられたと説明する。

2003年には、抗HIVプロテアーゼ阻害剤であるロピナビルとリトナビルからなるKaletraが抗ウイルス活性を示したと説明。

3CLpro阻害剤として、セロトニン拮抗剤であるシナセリンが8000件の承認薬データベースに開示されており、評価の結果、SARSウイルスを阻害すると確認。

お茶の3つの天然成分であるタンニン酸、3-イソテアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3,3′ジガレートは、3CLproに対して阻害活性を示したと説明。

グリチルリチン、HIVプロテアーゼ阻害剤ネルフィナビル、駆虫薬ニコロサミド、抗マラリア薬クロロキンも複製を阻害、リバビリンとIFN-βの併用、ペギル化IFNとリバビリンの併用も複製への効果があると説明する。

アミオダロンは、塩酸クロルプロマジンおよび塩酸トリフルプロマジン、ジェムシタビン、メシル酸イマチニブとダサチニブという 2 種類のキナーゼ阻害剤も効果が示されている。複製に不可欠なAbelsonチロシン-タンパク質キナーゼ2(Abl2)が、イマチニブの標的として同定されていると説明。

非構造タンパク質(3CLpro、PLpro、ヘリカーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼなど)のほか、構造タンパク質(スパイクタンパク質、N、Eなど)や付属タンパク質があり、非構造タンパク質はライフサイクルに重要で、スパイクタンパク質はウイルス侵入時にウイルスと宿主細胞の相互作用に必要になる。 4つの酵素は治療標的になり得ることが示されており、Nタンパク質を標的とした治療法の開発も進んできた。

SARSウイルスのスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に開発された多くのモノクローナル抗体(m396、CR3014など)は、スパイクタンパク質を効果的に結合せず、さらなる開発が求められると説明している。

ウイルス侵入阻害剤として作用する一連の分子が出現。漢方薬由来の低分子のスクリーニングも行われ、ルテオリンとテトラ-O-ガロイル-β-d-グルコースの可能性が明らかになっている。新型コロナウイルスは細胞のACE2と結合するとは細胞内に侵入するため小胞に取り込まれる。カテプシン酵素は、小胞の特徴である酸性媒体中で作用し、ウイルスと小胞膜の融合を促進。2005 年の研究では、カテプシンL阻害剤侵入を標的とした新規の治療オプションとして注目されている。

2013年、侵入を阻止するための約1万4000の化学ライブラリをスクリーニング。少なくとも3つの異なるメカニズムで作用する化合物を解明。ACE2とSARSスパイクタンパク質RBDの相互作用を阻害、カテプシンL阻害剤、ウイルス膜と宿主細胞膜の融合を阻害というもの。

新型コロナウイルスは宿主のセリンプロテアーゼTMPRSS2をスパイクタンパクのプライミングに利用していることから、セリンプロテアーゼ阻害剤であるカモスタットメシル酸塩は、TMPRSS2活性を阻害するので治療薬の可能性がある。

抗マラリア薬のクロロキンACE2 を阻害し、感染拡大を有意に抑制することが示される。中国で実施された臨床試験では安全性、有効性が確認されたと紹介。

毒性の低いアミノキノリンであるヒドロキシクロロキンは、N-ヒドロキシエチル側鎖を有しているため、クロロキンよりも可溶性が高い。ヒドロキシクロロキンは活性化された免疫細胞に対して調節作用を示し、Toll様受容体(TLR)やTLRを介したシグナル伝達の発現を抑制。インターロイキン-6の産生を抑制。臨床的有効性はまだ確立されていないとする。
5-ベンジルオキシグラミンは、MERS-CoV Nタンパク質の強力な安定化剤。抗ウイルスプロファイルを示すことが確認されている。

2020年5月米国、イタリア総説。

Ghosh AK, Brindisi M, Shahabi D, Chapman ME, Mesecar AD. Drug Development and Medicinal Chemistry Efforts toward SARS-Coronavirus and Covid-19 Therapeutics. ChemMedChem. 2020 Jun 4;15(11):907-932. doi: 10.1002/cmdc.202000223. Epub 2020 May 7. PMID: 32324951; PMCID: PMC7264561.

新型コロナウイルス感染症

 

モバイルバージョンを終了