STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、AIと医療の融合が進むヘルスケア・テクノロジーの最新動向を追っています。今回は、ロシュ(Roche)が発表したAIによる慢性腎臓病(CKD)進行リスク評価アルゴリズム「Kidney Klinrisk Algorithm」のCEマーク取得と、新しいCKDアルゴリズムパネルの欧州導入について紹介します。
- 【要点①】ロシュとKlinRisk社が共同開発したAI腎機能リスク予測アルゴリズムが欧州でCEマークを取得
- 【要点②】CKDアルゴリズムパネルとしてnavifyプラットフォーム上で提供開始
- 【要点③】糖尿病・高血圧患者を含む早期ステージでの腎機能低下リスクをAIで可視化
2025年10月6日、ロシュ(Roche)は、米国のAI医療企業KlinRisk社と共同開発したAIベースの腎機能低下リスク評価ツール「Kidney Klinrisk Algorithm」がCEマーク認証を取得したと発表しました。これは、腎機能の進行的低下を予測するための世界初のAIリスク層別化ツールです。
本アルゴリズムは、ロシュのnavify Algorithm Suite上で展開される新しい慢性腎臓病(CKD)アルゴリズムパネルの一部として提供され、疾患初期から末期までの包括的なケア支援を目的としています。このパネルには、既存のKidney KFRE Algorithm(後期CKD管理向け)も統合されています。
ロシュ・ダイアグノスティックスCEO マット・ソース氏は次のように述べています。
「AIを活用したKidney Klinrisk Algorithmの導入は、この“静かな進行性疾患”と闘う上で大きな進歩です。医師はこれにより、糖尿病や高血圧を持つ患者を含め、腎機能低下のリスクを早期段階で把握し、適切な介入を行うことが可能になります。」
このアルゴリズムは、血液・尿検査データなどの複数の臨床入力情報を組み合わせ、機械学習(ML)を用いて腎機能の進行リスクを数値化します。推奨事項は国際的な臨床ガイドラインと整合しており、医師は病院システム上で統合的にアルゴリズム結果を確認できます。
CKD管理におけるAIの新しい役割
CKDは世界で7億人以上が罹患しているとされ、糖尿病や高血圧、肥満の増加により発症率が上昇しています。早期段階では症状が乏しく、診断が遅れるケースが多いことが課題です。ロシュはAIを活用し、早期リスク層別化とガイドライン準拠の治療選択を支援することで、疾患進行の抑制と医療費負担の軽減を目指しています。
アルゴリズムの技術的特徴
- 名称→ Kidney Klinrisk Algorithm
- 開発→ Roche × KlinRisk Inc.
- 技術→ 機械学習(ML)によるリスク予測モデル
- 対象→ CKDステージG1〜G4の成人、または糖尿病・高血圧を有する腎リスク患者
- プラットフォーム→ navify Algorithm Suite(クラウド統合型)
- 認証→ CEマーク(IVDR適合、NB 0123)
- 提供地域→ 欧州・英国(将来的に米国、中東、アジアへ展開予定)
本アルゴリズムは、カナダ・マニトバ大学の腎臓病専門医ナヴディープ・タンギリ博士が率いるチームが開発を主導しており、既存の腎疾患リスクモデルにAIを融合させた精密診断技術として注目されています。
AIによる医療・社会インパクト評価(参考)
★★★★★
ロシュのKidney Klinrisk Algorithmは、AIによる腎疾患リスク管理の実用化を象徴するプロジェクトです。従来の腎機能評価が「進行後の診断」に偏っていたのに対し、本アルゴリズムは「未発症段階での予測的介入」を可能にします。糖尿病・高血圧などの慢性疾患群を横断的に支援する点で、デジタルヘルスの臨床価値を大きく引き上げると評価できます。
参考文献
Roche. “Roche receives CE Mark for AI-based Kidney Klinrisk Algorithm and launches new comprehensive chronic kidney disease (CKD) algorithm panel.”
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-10-06
GBD Chronic Kidney Disease Collaboration, Lancet (2020); Francis et al., Nat Rev Nephrol (2024); Tangri et al., Kidney Int Rep (2025).