STELLANEWS.LIFEは、最新の研究成果に基づき、科学と健康の新たな接点を探るメディアである。今回は、配偶者の糖尿病診断が本人のうつ病リスクに与える影響について、京都大学と海外の研究機関による国際共同研究の成果を紹介する。
京都大学白眉センターおよび医学研究科の研究チームは、米国ハーバード大学およびUCLAの研究者とともに、全国健康保険協会(協会けんぽ)の医療レセプトと健診データを用いた研究を実施した。対象は521,010組の夫婦で、最大6年間にわたる追跡が行われた。
研究の結果、配偶者が糖尿病と診断された家庭では、配偶者が糖尿病でない家庭と比べて、本人(世帯主)がうつ病と診断されるリスクが約8%高くなることが判明した(調整ハザード比1.13)。さらにこのリスクの一部(約22.4%)は、配偶者の後のCVD(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の発症によって媒介されていることが示された。
研究者らは、糖尿病患者のCVDリスク管理だけでなく、世帯全体へのメンタルヘルスサポートの提供が、公衆衛生上の新たな重要課題であることを提起している。特に、高リスク世帯に対する介入が、限られた医療資源を効果的に用いるために有効である可能性がある。
- 発表機関→京都大学 白眉センター、医学研究科
- 発表日→2025年4月24日
- 研究の背景→糖尿病が家族に与える心理的影響の定量的分析が不足していた
- 研究の目的→配偶者の糖尿病診断が本人のうつ病に与える影響を明らかにする
- 研究手法→全国健康保険協会の医療レセプトと健診データに基づくコホート分析
- 追跡期間→最大6年間
- 主な結果→糖尿病診断家庭の本人のうつ病リスクが8%増加、CVDがその一部を媒介
- 研究の意義→家族単位での支援とメンタルヘルス対策の必要性を示唆
- 論文掲載誌→American Journal of Epidemiology
- 論文タイトル→Depression Risk Associated with Spouses’ Diabetes and Cardiovascular Events: A Nationwide Cohort Study
- DOI→10.1093/aje/kwaf075