イーライリリー社は2023年3月3日、再発リスクの高いホルモン受容体陽性(HR+)、ヒト上皮成長因子受容体2型陰性(HER2-)、リンパ節転移陽性の早期乳がんの術後補助療法としてアベマシクリブ(商品名ベーゼニオ)がホルモン療法との併用療法として米国FDAに承認拡大されたと発表した。
プレスリリースのアウトラインは次の通り。
この適応症は、Ki-67スコアに関係なく、結節の状態、腫瘍の大きさ、腫瘍のグレードのみに基づき、高リスクの人を特定するために拡大された。
*Ki-67スコアはがん細胞の増殖の程度を示す数値。
今回の承認は、内分泌療法にアベマシクリブを追加することで再発リスクが35%減少したことを示した第3相monarchE試験の4年間のデータが裏付けとなっている。
アベマシクリブは、術後補助療法で承認された最初で唯一のCDK4/6阻害剤となる。
monarchE試験には成人5637人が登録され、アベマシクリブは試験対象者の91%を占めるコホート1の全患者集団で使用が承認された。
以上がプレスリリースのポイントである。
乳がんの中でもHR+はホルモン療法が効果を示す可能性が高いタイプである一方で、HER2-は標的治療が効果を示しにくい特徴と言える。リンパ節陽性であれば、がんはやや進んでいることになり、こうした場合に治療の選択肢が多いに越したことはない。
そうした中で、今回の適応拡大は治療選択肢を増やすことになるので有望と言っていい。米国での適用拡大だが、日本でも手術不能例で使われてきたこの薬のアジュバント療法としての安全性や有効性は注目されてくることもあるだろう。
参考文献
U.S. FDA Broadens Indication for Verzenio (abemaciclib) in HR+, HER2-, Node-Positive, High Risk Early Breast Cancer