2024年に「Scientific Reports」に掲載されたVadim Osadchiy氏らによる研究論文では、異常な精子の特性を持つ男性の精液内の微生物叢(microbiome)が、正常な精子を持つ男性と比較して大きく異なることを明らかに。この研究は、男性の生殖健康において、微生物叢が果たす役割に新たな光を当てた。
主な内容:
- 背景: 人間の微生物叢が健康や疾患に重要な役割を果たしていることが近年示されている。一方で、異常な精子分析結果の30%において原因が特定されていない。この研究は精液の微生物叢がこの問題に影響を与えている可能性を調べた。
- 方法論: 既に子供を持つ男性を対象に、精子分析と次世代シーケンシングを行い、精液の微生物叢を分析。研究では微生物叢の組成分析と相関分析を行った。
- 主な発見:
- 精子運動性が異常な男性(27人)は、正常な男性(46人)と比べて、Lactobacillus inersの割合が高いことが確認された。
- 精子濃度が異常な男性(20人)は、Pseudomonas stutzeriやPseudomonas fluorescensの割合が高く、Pseudomonas putidaの割合が低いことが示された。
- 限界: 研究は横断的で観察に基づくデザイン。これが主な制約となっています。
- 意義と影響: 特定の微生物が精子分析のパラメータに重要な影響を与える可能性が示唆された。この知見は、精子の品質向上と男性の生殖能力改善のための新たな治療法の開発に寄与するかもしれない。