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アルツハイマー病で脳内コレステロールが果たす役割を確認、米国の研究グループが報告

先進的な超高解像度のイメージング技術により、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドβタンパク質の蓄積が、神経細胞を助ける働きを持つ「アストロサイト」と呼ばれる細胞由来の脳内コレステロールにより直接的に制御されていることが、生体マウスの脳で確認された。
非営利の生物医療科学研究所であるスクリプス研究所やバージニア大学などの米国の研究グループが、総合科学誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』で8月に発表した。

アポリポタンパクEにより脂質ラフトへ

アルツハイマー病では、大きな特徴の一つとして、脳内にアミロイドβタンパク質の一種が凝集した「プラーク」と呼ばれる不溶性の塊ができることが知られており、病気の原因になっていると想定されている。
その一方で、アミロイドβの生成については、これを標的とする治療でなかなか成果が出ないこともあって、脳内での役割を巡って異論が絶えない。原因ではなく、何らかの異常の結果に過ぎない可能性も考えられている。
過去の研究から、コレステロールの関与が示唆されているものの、技術的な制約により確認されていなかった。

このたび研究グループは、先進的な超高解像度のイメージング技術を用いて、生体マウスの脳内や培養細胞内のコレステロールやアミロイドβの可視化に成功。
アストロサイトと呼ばれる細胞が生成するコレステロールに着目して、その動きを追跡した。
観察によると、コレステロールは脂質の代謝に関わるタンパク質であるアポリポタンパクEによって神経細胞の外膜に運ばれ、そこで極めて微小な脂質の塊(脂質ラフト)の維持に関わっていると見られた。
脂質ラフトは、情報伝達分子が集まって重要な細胞機能を行うハブのようなものと考えられている。

アミロイドβ前駆体に作用

一方、アミロイドβ生成の元になるタンパク質(神経アミロイド前駆体タンパク)も、細胞膜に存在するが、ここでコレステロールを運ぶアポリポタンパクEが、この前駆体タンパク質を近くの脂質ラフトに接触させると分かった。

そしてラフト内で酵素が前駆体タンパク質を分解して、アミロイドβが生成されることが示された。
アポリポタンパクEとコレステロールの流れを阻害すると、前駆体タンパク質はラフトに接触せず、アミロイドβも生成されなかった。

さらに、遺伝子操作によるアルツハイマー病のモデルマウスで、アストロサイト脳細胞のコレステロール合成を阻害すると、アミロイドβの生成が激減した上、プラークも消失。
アルツハイマー病のもう一つの大きな特徴であるリン酸化タウタンパクの蓄積も、消失した。
神経細胞内のコレステロールは低レベルに維持され、それによってアミロイドβの蓄積を防ぎ、アストロサイトのコレステロールシグナリングによりアミロイドβ蓄積が制御されていると研究グループは結論。
これらの結果から、コレステロールの合成を標的とする治療法につながる可能性が浮上するものの、コレステロールは正常な認知機能の維持などに必要と分かっているため、単純に排除することはできないと指摘している。

Discovery highlights role of brain cholesterol in Alzheimer’s | Scripps Research

https://www.scripps.edu/news-and-events/press-room/2021/20210813-hansen-amyloid.html

Regulation of beta-amyloid production in neurons by astrocyte-derived cholesterol | PNAS

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2102191118
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