STELLANEWS.LIFEは、科学や医療分野における最前線の研究成果を紹介し、革新の軌跡を読者に伝えることを目的としている。今回は、東京慈恵会医科大学による脳活動の可視化技術に関する画期的な研究成果を取り上げる。
- 痛みが生じているときの扁桃体の活動をリアルタイムで可視化するMRI技術を世界で初めて開発
- ZTE(ゼロエコー時間法)を応用し、従来のfMRIでは困難だった脳領域の可視化に成功
- 今後のヒト脳研究や疼痛メカニズムの解析に大きな進展が期待される
東京慈恵会医科大学とブルカージャパン株式会社を中心とする研究チームは、急性の痛みに反応する脳の扁桃体の活動をリアルタイムで可視化する新しい機能的MRI(fMRI)手法を開発した。これは、マウスモデルにおける扁桃体の活動を直接観測可能にした世界初の技術であり、ZTE(ゼロエコー時間)法を応用することで実現された。
従来のfMRIでは、扁桃体周辺の信号が磁化率アーチファクトによって減衰し、観測が困難であった。これに対し、ZTE法はエコー時間を限りなくゼロに近づけることで、静磁場の不均一性の影響を抑え、扁桃体の信号を高精度で取得することを可能にした。
研究では、9.4TのMRI装置を用い、マウスの足裏にホルマリンを注射して急性痛を引き起こし、ZTEで撮像を行った。その結果、扁桃体を含む複数の脳領域で、刺激から5分以内および20分後の二相性の活動変化が観測された。このパターンは行動学的解析と一致しており、ZTE法による痛み関連脳活動の可視化が可能であることを証明している。
今後、この技術は、fMRIでは観測が困難とされるヒトの眼窩前頭前野や側頭部の脳活動の解析に応用されることが期待される。これにより、認知機能の研究や慢性疼痛メカニズムの解明が飛躍的に進展する可能性がある。
- 発表機関→東京慈恵会医科大学、筑波大学、産業技術総合研究所、ブルカージャパン株式会社
- 発表日→2025年4月1日
- 研究の背景→従来のfMRI技術では扁桃体の可視化が困難であったため、新技術の必要性が高まっていた
- 研究の目的→磁化率アーチファクトの影響を受けにくいfMRI手法の開発により、扁桃体の活動をリアルタイムで計測すること
- 使用技術→ZTE(ゼロエコー時間法)をfMRIに応用し、3秒ごとの全脳撮像を可能にした
- 実験手法→マウスの足裏にホルマリンを投与して急性痛を誘発し、ZTEで脳活動を計測。生理食塩水を対照群とした
- 主な成果→扁桃体、大脳皮質、視床などで明確な活動の2相性変化を確認。活動パターンは急性炎症に対応
- 応用可能性→眼窩前頭前野や側頭部など、従来計測困難だったヒト脳部位での認知・疼痛研究への応用
- 論文掲載→NeuroImage誌 第307号(2025年2月15日)
参考文献
NeuroImage誌 第307号121024
https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2024.121024
東京慈恵会医科大学プレスリリース
https://www.jikei.ac.jp/press/detail/?id=34028