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自己免疫疾患に関与する病原性B細胞「ABCs」の形成メカニズムを九州大学が解明

STELLANEWS.LIFEは、科学や医療の最前線で展開される革新的な研究成果を発信するメディアである。今回紹介するのは、自己免疫疾患や老化に伴い蓄積する病原性B細胞の形成メカニズムを明らかにした、九州大学生体防御医学研究所による画期的な研究成果である。本研究は、自己免疫疾患の新たな治療法開発に光をもたらす可能性を秘めている。

  • 病原性B細胞「ABCs」がどのように誘導されるのかを初めて解明
  • アナジーB細胞からの分化とBCRシグナルの持続が鍵であることを発見
  • 自己免疫疾患に対する副作用の少ない新規治療法の可能性が示される

自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス(SLE)」などに関与する特殊なB細胞「ABCs(Age-associated B cells)」の誘導メカニズムはこれまで不明であった。今回、九州大学の馬場義裕教授らの研究グループは、アナジーB細胞が慢性的に自己抗原に曝露されることで、持続的なB細胞受容体(BCR)シグナルを受け、ABCsへと分化する仕組みを世界で初めて明らかにした。

ABCsは、自己抗体や炎症性サイトカインを産生し、自己免疫反応を助長する特性を持つ。研究では、老齢マウスおよび自己免疫疾患モデルマウスを用いて、ABCsが自己抗原に常時さらされることでBCRが細胞内に取り込まれ、活性化が持続している状態であることが示された。さらに、アナジーB細胞で発現する遺伝子「Nr4a1」がABCsへの分化を抑制するブレーキ機能を果たしていることも判明した。

研究チームは、ABCsで恒常的に活性化しているBCRシグナル伝達の中核分子「ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)」に着目し、Btk阻害薬の投与によって、ABCsを選択的に除去し、疾患症状を改善することに成功した。この成果は、ABCsを標的とすることで副作用を抑えつつ、根本治療に近づく新たなアプローチの可能性を示している。

参考文献

Science Advances 掲載論文
“Critical roles of chronic BCR signaling in the differentiation of anergic B cells into age-associated B cells in aging and autoimmunity”
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adt8199

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