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アレルギー研究で患者市民参画を日本初調査、慶應・東大・成育がPPIE実態明らかに

STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学・医療・社会の接点に関する研究成果を多角的に報じるメディアである。
慶應義塾大学医学部・東京大学医科学研究所・国立成育医療研究センターの共同研究グループは2025年10月9日、 「我が国のアレルギー研究における患者・市民参画(Patient and Public Involvement and Engagement:PPIE)」の実態を体系的に明らかにしたと発表した。 本研究は、がんや難病領域との比較を通して、アレルギー研究における患者・市民との協働の現状と課題を初めて可視化したもので、 その成果は国際誌 Allergy に掲載され、国連総会併催科学サミットでも報告された。

  • 【要点①】アレルギー領域では患者団体がPPIEの必要性を強く認識している一方、研究者側の体制整備は不十分。
  • 【要点②】患者団体の50%が連携ルールを整備済みだが、研究者側では9.4%にとどまる。
  • 【要点③】教育研修・コーディネーター育成・デジタルツール整備が今後の推進策として提案。

本研究は、全国の研究者(Principal Investigators: PI)および患者団体(Patient Advocacy Groups: PAG)を対象にアンケート調査を実施し、 双方の意識差と連携体制を分析した。調査結果では、アレルギー領域の患者団体の100%がPPIEの必要性を認識していたのに対し、 研究者側では50%にとどまった。一方、がん・難病領域の研究者では64.7%がPPIEを重要と回答している。

さらに、アレルギー患者団体の87.5%が研究者との接点を持つのに対し、研究者側で実際に患者団体と関わりを持つのは15.6%と大きな乖離がみられた。 また、PPIE関連のデジタルツール活用についても、患者団体の100%が利用している一方、研究者の活用率は低く、 情報交換6.3%、意見収集15.6%にとどまった。

研究の成果と提言

PPIEとは

PPIE(Patient and Public Involvement and Engagement)は、患者や市民が研究の企画・実施・評価に主体的に関わる仕組みであり、 研究の質と社会的妥当性を高めることを目的とする。2024年に世界医師会が改訂したヘルシンキ宣言にも、 医療研究における倫理的原則としてPPIE推進が新たに明記されている。 日本国内ではAMEDが中心となってガイドラインや教育ツールの整備を進めており、今回の研究はその実装状況を学術的に裏付ける成果といえる。

研究の意義と今後の展望

本成果は、医療研究の民主化・共創化に向けた重要なマイルストーンとなる。 アレルギー領域は慢性疾患であり、生活者視点の研究デザインが求められる分野であるため、PPIEの促進は患者満足度・研究成果の両立に直結する。 今後は、教育・研修による人材育成とデジタル基盤の拡充により、患者・市民と研究者が共に医療を「育てる」社会実装が期待される。

論文情報

タイトル: Exploring Patient and Public Involvement and Engagement in Allergy Research: Cross-Disease and Cross-Stakeholder Perspectives in Japan
掲載誌: Allergy(DOI: 10.1111/all.70064)
著者: Takeya Adachi, Saori Watanabe, Kaori Muto, Hideaki Morita ほか
発表日: 2025年9月18日(米国/英国時間)

国際発表と関連イベント

研究成果は第80回国連総会併催「サイエンス・サミット2025」における 「グローバルヘルスの課題に取り組むための患者・市民参画(PPIE)の推進シンポジウム」で発表された。 本シンポジウムは慶應義塾大学病院アレルギーセンターとNPO法人ケイロン・イニシアチブが共同主催し、 国内外の研究者、患者団体、政策担当者が集い、医療分野における共創型リサーチのあり方を議論した。

AIによる研究インパクト評価(参考):

★★★★★

本研究は、日本におけるPPIE実装の現状を定量的に把握した初の体系的調査であり、 医療研究政策・倫理指針の形成に資する社会的意義が極めて高い。 今後、アレルギーに限らず慢性疾患やコモンディジーズ全般への展開が期待される。

参考文献・出典

慶應義塾大学プレスリリース(2025年10月9日): 「我が国のアレルギー研究における患者・市民参画の実態を初めて体系化-がん・難病との比較をもとに、必要な支援策を明らかにし、国連総会併催科学サミットで国際的に提言-」
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2025/10/9/28-169801/

出典:慶應義塾大学医学部/東京大学医科学研究所/国立成育医療研究センター 共同発表資料(2025年10月9日)

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