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京都大学大学院医学研究科の滝田順子教授、加藤格講師、三上貴司特定助教(当時特定研究員)らの研究チームは、急性リンパ性白血病(ALL)が急性骨髄性白血病(AML)へと変化して再発する「系統転換(lineage switch)再発」の病態を解析し、免疫抑制性を獲得する分子機構を明らかにした。本研究成果は2025年8月26日、国際学術誌『Nature Communications』にオンライン掲載された。今回の記事で伝える情報は次の通り。
白血病治療における免疫療法の進展により、がん免疫の標的を失う「系統転換再発」が臨床上の課題となっている。研究グループは、KMT2A遺伝子再構成を伴う急性リンパ性白血病(ALL)の再発例を対象に、RNAシーケンス、全エクソーム解析、質量サイトメトリー(CyTOF)、シングルセルRNA解析などを組み合わせたマルチオミクス解析を実施した。その結果、再発した急性骨髄性白血病(AML)は、単球性骨髄由来抑制細胞(monocytic myeloid-derived suppressor cell:M-MDSC)に類似する免疫抑制的な性質を持つことが判明した。これらの細胞はT細胞活性を抑制し、制御性T細胞の誘導を促すなど、免疫逃避に関与していることが示された。
- 発表元→ 京都大学大学院医学研究科 発達小児科学
- 発表日→ 2025年9月30日
- 対象疾患→ 急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)
- 研究の背景→ CAR-T細胞療法や二重特異性抗体療法の普及により、系統転換再発が新たな課題として顕在化
- 解析手法→ マルチオミクス解析(RNA-seq、全エクソーム解析、CyTOF、シングルセルRNA解析)
- 主要結果→ 系統転換AMLはM-MDSC様の免疫抑制表現型を獲得し、T細胞応答を抑制することが確認された
- 臨床的含意→ 免疫抑制性を標的とした新規治療戦略の開発に寄与する可能性
- 研究支援→ 日本学術振興会科学研究費補助金、AMED、各種公益財団による助成
- 論文掲載誌→ Nature Communications(DOI:10.1038/s41467-025-63271-y)
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
難治性白血病の系統転換機構に免疫抑制性が関与することを初めて包括的に示した報告であり、今後の白血病治療戦略を再定義する可能性が高い。
