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慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の天谷雅行教授(理化学研究所生命医科学研究センター センター長)、高橋勇人准教授、向井美穂共同研究員らの研究グループは、理化学研究所および大阪大学との共同研究により、病因性T細胞を免疫抑制機能を持つ「安定化誘導型制御性T細胞(iTreg)」へ変換し、自己免疫疾患・尋常性天疱瘡の病態を抗原特異的に抑制することに成功した。本研究成果は、2025年10月22日(米国東部時間)に『Science Translational Medicine』に掲載された。今回の記事で伝える情報は次の通り。
尋常性天疱瘡は、皮膚の接着分子デスモグレイン3(Dsg3)に対して自己抗体が産生され、水疱やびらんを引き起こす難治性の自己免疫疾患である。研究チームは、大阪大学で開発された「安定化iTreg培養法」を用いて、Dsg3特異的iTregを作製し、モデルマウスに投与した。その結果、抗Dsg3抗体価の低下および疾患スコアの有意な減少を確認し、病態の抗原特異的抑制を実証した。さらに、患者由来の末梢血からも安定化iTregを誘導し、他の免疫細胞の活性化を抑制する能力を試験管内で確認した。これにより、遺伝子改変を伴わずに自己免疫疾患の標的免疫を制御できる可能性が示された。
- 発表元→ 慶應義塾大学医学部/理化学研究所/大阪大学
- 発表日→ 2025年10月23日
- 対象疾患→ 尋常性天疱瘡(自己免疫性皮膚疾患)
- 研究の背景→ 従来のTreg細胞は性質が不安定で、治療応用が困難だった。
- 研究内容→ 病原性T細胞から安定化iTregを誘導し、抗原特異的に免疫反応を抑制
- 主要結果→ Dsg3特異的iTregが病原性B細胞を抑制し、抗体価と症状を有意に低下(p<0.01)
- メカニズム→ iTregはFoxp3遺伝子の高い脱メチル化率を維持し、免疫抑制機能を安定化
- 臨床的含意→ 抗原特異的免疫抑制により副作用を最小化し、自己免疫疾患治療に新たな道を拓く
- 次のステップ→ 臨床試験に向けたiTreg細胞療法の実用化検討と安全性評価
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
病因性T細胞を遺伝子改変なしで免疫抑制性細胞に変換するという概念は画期的であり、抗原特異的免疫療法の新しい基盤となる可能性が高い。再生・免疫医療分野で極めて高いインパクトを有する。
