英国政府に対し、同国をタバコのない国にするという2年前の政府公約を果たすための行動がいまだに取られていないと指摘し、タバコ会社への課金により公約実施のための資金を集めるよう促す訴えがあった。
英国の主だった医師、がんや循環器系の専門家組織、慈善団体などから成る研究グループが、同国首相及び保健相に宛てた公開状として医学誌『BMJ』で7月に発表した。
喫煙人口は減りつつあるが不十分
2019年7月、英国政府は2030年までにイングランドにおいて(スコットランドは2034年までに)タバコを廃止する(実際的には喫煙者を5%未満にする)という目標を発表した。
公開状では、それから2年後の今も、「極度に困難だが、やりがいがある」と政府が自ら認めたこの目標を実現するための「大胆な行動」が取られていないと指摘。
現状に関し、喫煙者は減っているものの、2018年には16歳未満の子ども2万人以上がタバコを吸い始めたという統計と、その3分の2が常習的な喫煙者になるという研究結果を紹介している。
さらに、貧富の差に起因する寿命の違いの50%は喫煙によること、またタバコがなくなって最も利益を受けるのは不利な条件の人々・地域であることを説明。
このまま行動を起こさなければ、2020年の喫煙に起因する死亡者数は新型コロナウイルスによる死亡者数を上回ると予想する。
タバコ廃止の目標は、社会格差を低減し、国全体を向上させつつ、2035年までに健康寿命を5年延ばすという政府公約にも大きく寄与すると主張。
この公約を達成するために「喫煙と健康に関する議員連盟(All Party Parliamentary Group on Smoking and Health)」が、次の「タバコ規制計画(Tobacco Control Plan)」に向けて提示した包括的な戦略は、適切な出資を受ければ実行可能という。
8億ポンド以上の徴収見込まれる
しかし、次の包括的歳出見直しでは、競合する優先事項の多さから公衆衛生が優先される確率は低いため、代替案として、タバコ廃止目標の発表時に政府も検討すると約束した米国式の「汚染者が償う」課金をタバコメーカーから徴収することを促している。
「喫煙と健康に関する議員連盟」の報告書によると、タバコメーカーへの課金により、1年目だけで8億ポンド以上が集まると思われる。喫煙者にツケを回すことなく、タバコ規制計画を実施し、絶対的に必要な他の公衆衛生分野にも出資できる額である。
インペリアル・タバコ社は2019年、100ユーロの売上につき71ユーロという法外な利益を上げたと指摘して、タバコメーカーに対し、自らのみに起因する潜在的な“エピデミック”を終わらせるための償いをさせるよう求めている。