STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学・医学研究の最前線を追う専門メディアとして、ノーベル賞をはじめとする生命科学分野の画期的成果や産学連携の進展を紹介している。今回は、免疫学者・阪大特別教授の坂口志文博士のノーベル生理学・医学賞受賞と、それに関連した塩野義製薬のコメントおよび研究開発動向を取り上げる。
- 【要点①】大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC)の坂口志文博士がノーベル生理学・医学賞を受賞
- 【要点②】塩野義製薬が共同研究者として祝意を表明、Treg研究とがん免疫薬開発を強化
- 【要点③】共同研究から生まれた抗CCR8抗体S-531011が臨床開発中
塩野義製薬株式会社(大阪市、代表取締役社長CEO:手代木 功)は2025年10月7日、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)の坂口志文特別教授が、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことに対し、祝意を表明した。
坂口博士は、免疫抑制に関わる「制御性T細胞(Treg)」を発見し、その免疫制御機構を解明した世界的な免疫学者である。この発見は自己免疫疾患やがん免疫療法の理解を大きく前進させ、免疫学のパラダイムを根本的に変えた。
塩野義製薬は2014年より、大阪大学 医学系研究科の医療イノベーション創出センター(CoMIT)内で坂口教授の指導のもと、腫瘍免疫およびTregをテーマにした共同研究講座を運営してきた。その成果として、腫瘍内Tregに特異的に発現する分子「CCR8」を同定。この知見を基に、塩野義は現在、抗CCR8抗体医薬「S-531011」の第1b/2相臨床試験を推進している。
塩野義は、「坂口博士のノーベル賞受賞は、Treg研究の臨床応用の重要性を改めて示すものであり、S-531011開発の意義を再確認する機会となった」と述べている。今後も同社は、博士の研究から得られた免疫制御の知見を活かし、革新的ながん免疫療法の早期実用化を目指す方針を示した。
- 発表元→ 塩野義製薬株式会社(日本)
- 発表日→ 2025年10月7日
- 受賞者→ 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 坂口志文 特別教授
- 受賞分野→ ノーベル生理学・医学賞
- 研究内容→ 制御性T細胞(Treg)の発見と免疫恒常性維持メカニズムの解明
- 共同研究→ 塩野義製薬と大阪大学CoMITにおけるTreg研究講座(2014年設立)
- 開発中製品→ 抗CCR8抗体 S-531011(がん免疫療法候補)
- 開発段階→ 第1b/2相臨床試験中(腫瘍免疫領域)
- 研究的意義→ 腫瘍浸潤Tregの特異的標的化により、免疫抑制環境の解除を目指す
- 企業コメント→ 「坂口博士の業績はS-531011開発の方向性を支える科学的基盤」(塩野義製薬)
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
ノーベル賞受賞により、日本発の免疫研究が世界的に再評価される契機となった。特にTreg標的治療の実用化を目指す企業連携は、免疫学と創薬の融合を象徴する出来事である。
参考文献
Shionogi & Co., Ltd. “Congratulations to Dr. Shimon Sakaguchi, Distinguished Professor at Osaka University’s Immunology Frontier Research Center, on Receiving the Nobel Prize in Physiology or Medicine.”
https://www.shionogi.com/global/en/news/2025/10/20251007.html
Sakaguchi S. et al. Regulatory T cells: key controllers of immune homeostasis and immune therapy. Cell. 2020;183(3): 763–776.
Shionogi R&D. Pipeline overview: S-531011 (anti-CCR8 antibody). ClinicalTrials.gov Identifier: NCT05832211.