STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、再生医療と神経疾患治療の最前線を追う。今回は、バイエル傘下のBlueRock Therapeutics(ブルーロック・セラピューティクス)が公表した、パーキンソン病治療用細胞治療薬「bemdaneprocel(ベムダネプロセル)」の第1相臨床試験36か月フォローアップ結果を取り上げる。
- 【要点①】bemdaneprocelの36か月データで安全性を確認、神経移植細胞の長期生着を確認
- 【要点②】運動機能指標(MDS-UPDRS)でベースラインから持続的改善傾向
- 【要点③】高用量群で臨床的に意味のある運動機能改善を維持(平均−17.9点)
2025年10月7日、バイエルAGおよびその完全子会社BlueRock Therapeutics LP(本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、ドイツ・ベルリン)は、パーキンソン病(PD)を対象とした細胞治療薬bemdaneprocel(BRT-DA01)の第1相臨床試験「exPDite」から、36か月フォローアップデータを発表した。この結果は10月6日、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)世界大会にて報告された。
解析の結果、bemdaneprocelは36か月時点でも安全性に関して良好な結果を示し、治療または外科手術に関連する重篤な有害事象は認められなかった。F-Dopa PETイメージングでは、12か月で免疫抑制を中止した後も移植されたドーパミン前駆細胞が生存し、脳内で生着を維持していることが確認された。
臨床的有効性指標でも、運動症状の改善が持続。MDS-UPDRS Part 3(オフ薬状態)スコアは高用量群で平均−17.9点、低用量群で−13.5点と、いずれも臨床的に意味のある改善を維持した。日常生活動作を測定するPart 2でも高用量群で−4.3点の改善が報告された。
また、「PD Diary(パーキンソン病日誌)」による評価では、高用量群で「良好なON状態」時間が平均+1時間延長し、「OFF状態」時間は約−0.93時間短縮した。これらの結果は、ドーパミン神経補充を目指す細胞治療の実用化に向けた重要なマイルストーンと位置付けられている。
BlueRock Therapeuticsの上級副社長ガビ・ベルフォート博士は「36か月データは、bemdaneprocelが長期的かつ有意義な治療オプションになり得る可能性を裏付けるものだ」とコメントした。バイエル製薬部門開発責任者クリスチャン・ロメル博士も「本結果は、パーキンソン病患者に必要とされる新しい治療選択肢の開発に向けた希望を強める」と述べている。
- 発表元→ Bayer AG / BlueRock Therapeutics LP(バイエル完全子会社)
- 発表日→ 2025年10月7日
- 対象疾患→ パーキンソン病(Parkinson’s disease)
- 試験名→ exPDite(第1相臨床試験)
- フォローアップ期間→ 36か月
- 主要評価項目→ 安全性、運動機能(MDS-UPDRS Part 2 & 3)、PD Diary
- 主な結果→ 安全性良好・長期生着確認、高用量群でMDS-UPDRS Part 3スコア−17.9点
- 細胞治療の内容→ ヒト胚性幹細胞由来のドーパミン神経前駆細胞を脳内移植
- FDA指定→ RMAT(再生医療先進治療)およびFast Track指定
- 次段階試験→ exPDite-2(第Ⅲ相試験、進行中)
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
ヒト幹細胞由来のドーパミン神経移植による治療が3年間にわたり安全かつ安定した効果を示したことは、神経変性疾患における再生医療の新たな転換点である。bemdaneprocelはパーキンソン病治療の「機能回復」を目指す初の細胞治療候補として注目される。
参考文献
Bayer AG. “BlueRock Therapeutics reports positive 36-month results from Phase I trial of bemdaneprocel for treating Parkinson’s disease.”
https://www.bayer.com/media/en-us/bluerock-therapeutics-reports-positive-36-month-results-from-phase-i-trial-of-bemdaneprocel-for-treating-parkinsons-disease/
Hauser RA et al. “Minimal clinically important difference in Parkinson’s disease as assessed in pivotal trials of pramipexole extended release.” Parkinson’s Dis. 2014; 2014:467131.
International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders, Abstracts 2025.