動物におけるトキソプラズマ症の報告
漫画作品である『ゴールデンカムイ』の中で取り上げられるアイヌ文化や習慣の中には、リスなどの肉を「チタタプ」として食べる習慣が紹介されている。100年以上の時を経て、人や物の移動が盛んになり、野生動物を取り巻く環境は大きく変化している。その一つの変化として、寄生虫の移動も起き、動物が持つ寄生虫が変化していることがある。そのためリスの肉を生で食べることを考えたときに、寄生虫感染の危険性は必ず考えておかねばならない。野生動物は多くの場合、寄生虫を保持し、新たな種類の寄生虫による感染リスクが高まっていることが考えられる。その辺りは注意が必要となる。
発生地→ドイツ
報告対象→動物の寄生虫感染
対象動物:
- 赤リス(Sciurus vulgaris)
- スウィンホーホオジロシマリス(Tamiops swinhoei)
- キノボリヤマアラシ(Erethizontidae sp.)
感染症→トキソプラズマ症による致命的な感染
症状:
- 全対象動物→多発性壊死性肝炎
- キノボリヤマアラシとスウィンホーホオジロシマリス→リンパ組織性および壊死性心筋炎
- キノボリヤマアラシ→リンパ組織性脳脊髄炎
- 赤リス→化膿性リンパ腺炎
診断→病変関連の多数のタキゾイト同定、トキソプラズマ・ゴンディの免疫組織化学および電子顕微鏡検査による確定
報告の特記事項→キノボリヤマアラシとスウィンホーホオジロシマリスにおけるトキソプラズマ症の報告は初めて
研究の意義→トキソプラズマ症が人間と動物に広く影響を及ぼす寄生虫病であることの再確認、さらなる研究と治療法の開発が必要