STELLANEWS.LIFEは、科学分野の情報をタイムリーに届ける専門メディアである。今回は、イヌの骨肉腫に対する新たな治療選択肢として注目される抗体薬物複合体「トラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)」に関する最新の研究成果を紹介する。
北里大学と東京大学を中心とした研究グループは、イヌ骨肉腫に対する新たな治療薬候補として、ヒト乳癌治療薬として使用されている抗体薬物複合体「トラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)」の有効性を明らかにした。本研究では、HER2(受容体型チロシンキナーゼ)がイヌの骨肉腫細胞で高発現していることに着目し、T-DM1の細胞毒性と作用メカニズムを詳細に検証した。
イヌ骨肉腫細胞株において、T-DM1は濃度依存的に細胞の生存率を有意に低下させ、トラスツズマブ単体と比較して強い抗腫瘍効果を示した。さらに、アポトーシス誘導を示す細胞周期解析やアネキシンアッセイの結果から、T-DM1が腫瘍細胞死を誘導する主要因であることが示された。
担癌モデルマウスにおいてもT-DM1の投与により腫瘤の増大が抑制され、生存期間が有意に延長された。これらの成果により、イヌの骨肉腫においてT-DM1が臨床的に有望な治療薬となる可能性が示唆された。
従来、イヌ骨肉腫の治療は外科手術が中心であるが、術後に高頻度で転移が発生し、化学療法の効果も限定的である。その中で本研究は、HER2陽性腫瘍に対する分子標的治療の獣医療応用という新たな道を開いた。
今後は、T-DM1の至適用量の確立とともに、臨床試験の実施が求められる。また、本研究グループはイヌの尿路上皮癌においても同薬剤の有効性を報告しており、複数の癌種にわたる応用拡大の可能性も期待される。
- 研究機関→北里大学獣医学部、東京大学大学院農学生命科学研究科、大阪公立大学
- 発表日→2025年3月21日
- 研究の背景→HER2はイヌの乳癌・前立腺癌などの悪性腫瘍で高発現し、新たな治療標的とされる
- 研究の目的→HER2を標的とする抗体薬T-DM1のイヌ骨肉腫における効果検証
- 使用薬剤→トラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1、商品名:カドサイラ)
- 主な実験手法→細胞生存率解析、アポトーシス誘導評価(細胞周期解析、アネキシンアッセイ)、担癌モデルマウス実験
- 主な成果→T-DM1はイヌ骨肉腫細胞に強いアポトーシス誘導効果と腫瘍増大抑制効果を示した
- 今後の展望→臨床試験による安全性・有効性評価と、他癌種への応用拡大の検討