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ネランドミラストが米国で承認──PDE4B阻害IPF治療で10年ぶりの新薬

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STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、肺疾患や希少疾患領域における新薬承認動向を専門的に追うメディアです。今回は、ベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer Ingelheim)が米国で承認を取得した、特発性肺線維症(IPF)治療薬「JASCAYD(ネランドミラスト)」について紹介します。

  • 【要点①】米FDAがIPF治療薬「JASCAYD」を承認―10年以上ぶりの新薬
  • 【要点②】PDE4B阻害を介し、肺機能低下を有意に抑制する初の経口薬
  • 【要点③】主要第3相試験「FIBRONEER-IPF」でFVC低下を最大64mL改善

2025年10月9日、ベーリンガー・インゲルハイム(本社:ドイツ・インゲルハイム)は、米国食品医薬品局(FDA)が特発性肺線維症(IPF)を対象とする経口治療薬JASCAYD(ネランドミラスト/nerandomilast)を承認したと発表しました。これは、同疾患に対して10年以上ぶりとなる新たな治療選択肢の誕生です。

JASCAYDはホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)を選択的に阻害する初の薬剤で、抗線維化および免疫調整作用を併せ持ち、IPF患者における肺機能低下の進行を抑制します。今回の承認は、第3相試験FIBRONEER-IPF試験(NCT05321069)および第II相試験(NCT04419506)の結果に基づいています。

主要評価項目である52週時点の努力性肺活量(FVC)の変化量では、JASCAYD 18mg群および9mg群でそれぞれ-106mL、-122mLと、プラセボ群(-170mL)に比べて有意な低下抑制が認められました。治療効果は投与2週目から確認され、1年間持続しました。さらに、併用療法を含む別試験では、12週時点でFVC低下を91mL軽減する効果が示されました。

安全性については、18mg群・9mg群とも下痢、食欲減退、疲労、体重減少などが主な副作用で、多くは軽度〜中等度でした。治療中止率はプラセボ群11%に対し、JASCAYD群では12〜15%でした。なお、製品ラベルには「警告・注意事項」セクションは設けられていません。

ベーリンガー・インゲルハイム取締役会議長のシャシャンク・デシュパンデ氏は、「本承認は、10年以上進展のなかったIPF治療の新時代を開くもの。FIBRONEER-IPF試験の成果は、当社の長年にわたる呼吸器疾患研究の成果を象徴している」と述べました。

同社は今後、中国、日本、EUなどでもJASCAYDの承認申請を進める計画です。また、米国では患者支援プログラムCareConnect4Meを通じ、経済的支援や服薬サポートを提供します。

AIによる医療技術インパクト評価(参考):

★★★★★

IPFは5年生存率ががんよりも低く、これまで進行を抑える新薬は登場していなかった。JASCAYDの承認は、PDE4B阻害という新しい経路で線維化を抑える初の経口薬であり、治療パラダイムの転換点と位置づけられる。今後、既存抗線維化薬との併用研究にも期待が寄せられる。

参考文献

Boehringer Ingelheim. “U.S. FDA approves Boehringer’s JASCAYD (nerandomilast) tablets as first new treatment option for adults with IPF in over a decade.”
https://www.boehringer-ingelheim.com/us/human-health/lung-diseases/pulmonary-fibrosis/fda-approves-new-treatment-option-adults-ipf

Richeldi L. et al. New England Journal of Medicine. 2025;392:2193–2202. doi:10.1056/NEJMoa2414108.

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