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Bayerは2025年10月24日、米国食品医薬品局(FDA)が更年期に伴う中等度から重度の血管運動症状(ホットフラッシュ)の治療薬として、非ホルモン治療薬「Lynkuet(一般名エリンザネタント)」を承認したと発表した。
- FDAがBayerのLynkuet(エリンザネタント)を承認。
- 更年期の中等度〜重度の血管運動症状(ホットフラッシュ)の治療薬として初のデュアル・ニューロキニン(NK1/NK3)受容体拮抗薬。
- OASIS第3相試験プログラムのデータに基づく承認。
ドイツ・ベルリン発 — Bayerは、エリンザネタント(ブランド名Lynkuet)が米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表した。本剤は更年期に伴う中等度から重度の血管運動症状(vasomotor symptoms, VMS、いわゆるホットフラッシュ)を対象とする経口薬で、ニューロキニン1(NK1)およびニューロキニン3(NK3)受容体を同時に阻害する世界初のデュアル・ニューロキニン拮抗薬である。
本承認は、第3相臨床試験プログラム「OASIS 1」「OASIS 2」「OASIS 3」のデータに基づいている。OASIS 1および2では、治療開始から4週および12週時点におけるホットフラッシュの発作頻度と重症度の減少を主要評価項目とし、両試験で統計学的有意な改善が認められた。OASIS 3では、52週間にわたる安全性評価を実施し、忍容性が良好であることが確認された。
- 発表元→ Bayer AG(ドイツ・ベルリン)
- 発表日→ 2025年10月24日
- 承認機関→ 米国食品医薬品局(FDA)
- 製品名→ Lynkuet(一般名:エリンザネタント/elinzanetant)
- 適応症→ 更年期に伴う中等度から重度の血管運動症状(VMS, ホットフラッシュ)
- 作用機序→
- KNDyニューロン(キスペプチン・ニューロキニンB・ダイノルフィン)経路におけるNK1およびNK3受容体を遮断し、体温調節中枢の過剰活性化を抑制。
- サブスタンスPおよびニューロキニンBのシグナルを阻害し、発汗や血管拡張を介したホットフラッシュを軽減。
- 試験概要→
- OASIS 1および2:12週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験(被験者796人)。
- OASIS 3:最大52週間の長期安全性試験(被験者627人)。
- 主要評価項目:ホットフラッシュの発作頻度および重症度の変化。
- 結果:いずれも統計学的有意に改善を示した。
- 専門家コメント→
- JoAnn Pinkerton医師(OASIS 2主要治験責任者): 「この承認により、更年期の女性に新しい非ホルモン治療の選択肢が提供される。」
- Claire Gill氏(米国National Menopause Foundation): 「女性が自身に合った治療法を選べる時代が広がっている。」
- Christine Roth氏(Bayer): 「ホルモンに依存しない新しい治療アプローチが実現した。」
- 承認範囲→ 米国のほか、オーストラリア、カナダ、英国、スイスで承認済。欧州連合(EU)では審査中。
- 販売予定→ 米国で2025年11月より供給開始予定。
- 開発背景→ 更年期関連VMSは全世界で約12億人の女性に影響を及ぼすとされ、年間約4,700万人が新たに更年期を迎えると推定されている。
- Bayerの女性医療戦略→
- 短期・長期避妊法、更年期治療、婦人科疾患治療の分野で研究開発を継続。
- 2030年までに1億人の女性に近代的な避妊手段へのアクセスを提供することを目標としている。
AIによる情報のインパクト評価(参考):
★★★★★
Lynkuetの承認は、ホルモン療法に代わる非ホルモン型の更年期治療薬として大きなマイルストーンであり、神経科学的アプローチを応用した新たな治療時代の到来を示す。特に、乳がん治療後のホットフラッシュなどホルモン治療禁忌群への応用が期待される。
参考文献
Bayer: “Bayer’s Lynkuet (elinzanetant) approved in the U.S. for treatment of moderate to severe vasomotor symptoms due to menopause” (Oct 24, 2025)
https://www.bayer.com/media/en-us/bayers-lynkuet-elinzanetant-approved-in-the-us-for-treatment-of-moderate-to-severe-vasomotor-symptoms-due-to-menopause/
