アストラゼネカ社とMSD社は、2023年ASCO GU Cancers Symposiumで、第3相PROpel試験の最終結果を発表した。
プレスリリースからその要点をまとめると次のようになる。
同試験では、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象として、オラパリブ(商品名リムパーザ)+アビラテロン(同ザイティガ)+プレドニゾン(またはプレドニゾロン、いずれもステロイドの一種)の併用療法とアビラテロン+プラセボの併用が比較された。
その結果、主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)について有効性が確認された。具体的には、オラパリブ+アビラテロン+プレドニゾン(またはプレドニゾロン)併用が、アビラテロン+プラセボに対し、疾患進行または死亡のリスクを34%有意に低減すると示された。
また、オラパリブ+アビラテロン+プレドニゾン(またはプレドニゾロン)併用では、全生存期間(OS)中央値が42.1カ月だったのに対して、アビラテロン+プラセボでは34.7カ月だった。これは統計学的有意差には達しなかったが、標準治療であるアビラテロンと比べた全生存期間中央値の差は7.4カ月。プレスリリースでは、オラパリブ+アビラテロン+プレドニゾン併用療法が新しい治療選択肢となる可能性があると指摘している。
併用療法の安全性および忍容性についての結果は、併用療法に含まれている各薬剤で既に知られている安全性や忍容性の情報と一致した。
オラパリブは、アストラゼネカ社とMSD社が共同で開発・販売するファースト・イン・クラスのPARP阻害薬。
以上がプレスリリースの内容となる。
PARP阻害薬については、各社がこの前立腺がんに対する効果を相次いで報告している。私たちの体の中には、「細胞」と呼ばれる小さなものがあり、体が正常に働くよう助けてくれているが、時々、これらの細胞は急速に成長および増殖し、がんと呼ばれる病気になることがある。細胞内のDNAが損傷し、がんなどの問題を引き起こすためだが、PARP酵素はDNAの修復する酵素である。この修復の仕組みによってがん細胞の生存を助けている場合があり、PARP酵素を阻害することで、がんの生存を抑え込むことが可能となる。その効果を持つのがPARP酵素阻害薬(PARP阻害薬)である。
今回の結果では、全生存期間については統計学的な有意差は確認されなかったが、有望な結果が示されており、他者の薬も含めてさらなる検証が進むことで、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬としての存在感が増す可能性もありそうだ。
AstraZeneca and MSD present final results of key secondary overall survival endpoint from Phase III PROpel trial at ASCO GU Cancers Symposium
https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/overall-survival-analysis-of-the-lynparza-propel-phase-iii-trial-in-metastatic-castration-resistant-prostate-cancer.html