子ども時代に親の喫煙に曝露すると、後に関節リウマチ(血清反応陽性)になるリスクが高くなる直接的な関連性が認められた。対象集団が女性のみの研究結果だが、本人の喫煙を考慮に入れても、リスクは独立して75%高くなるという。
ブリガム&ウィメンズ病院およびハーバード大学医学部などの米国の研究グループが、リウマチ性疾患の専門誌『Arthritis & Rheumatology』で2021年8月に発表した。
NHSIIの30年近い追跡データを分析
全身性の炎症性疾患である関節リウマチの発生には、遺伝的及び環境的な要素が影響するが、免疫不全と関節リウマチ関連の自己抗体が最初に発生する場所として肺の炎症の関与が注目されてきた。
そのため、関節リウマチの人の多くが肺粘膜の炎症を示すこともあって、喫煙は以前から関節リウマチの重要な危険因子と考えられており、疫学調査でも十分に確立された環境的危険因子である。
しかし、関節リウマチ患者の大半は喫煙しないため、研究グループは今回、比較的探求されていない受動喫煙について調べた。
1989〜2017年の間2年ごとに収集された看護師健康調査(NHSII)のアンケート回答(9万人以上、35〜52歳)を使用し、医療記録に基づく関節リウマチの発症と血清反応のデータとを付き合わせて分析。
受動喫煙は、妊娠中の母親の喫煙、子ども時代の親の喫煙、18歳以降に喫煙者と同居した年数という3パターンに分けた。
本人の喫煙などの要素について調整して、受動喫煙と関節リウマチのリスクとの関連性を分析した。
本人の喫煙でさらにリスク増加
こうして判明したのは、子ども時代に親の喫煙による受動喫煙があった人は、関節リウマチになるリスクが75%高くなること。このリスクは、後に自分自身も喫煙者になった人ではさらに2倍以上に増加した。
中央値27.7年の追跡期間中、532人が関節リウマチになり、大半(352人)が血清反応陽性(関節リウマチ自己抗体陽性)だった。妊娠中の母親の喫煙と18歳以降の喫煙者との同居については、関節リウマチのリスクとの有意な関連性は見られなかった。
子ども時代の親の喫煙が後の関節リウマチ発症に直接的に影響する可能性があると研究グループは結論。今回の研究は対象が女性に限られていたため、男性を含めた追跡研究のデータを用いて調査を続ける予定である。
また、将来の研究では、子ども時代の受動喫煙が、他の自己免疫性疾患でも素因となる可能性についても調べる必要があると指摘している。