がんの化学療法では副作用などの症状を適切に管理することが不可欠だが、24時間の遠隔監視システムを用いることで、患者が自宅にいながら副作用の症状をよりよく管理し、QOLを改善できると分かった。COVID-19パンデミックの最中では特に有用になりそうだ。
 英国、ギリシャ、オーストリアなどの国際的な研究グループが、医学誌『BMJ』で7月に発表した。

欧州5カ国にわたる大規模試験

 通院で化学療法を受ける場合、副作用などの症状がどの程度重篤かの判断は患者に任されるため、不確かさや報告の遅れなどのリスクが伴う。
 近年発達してきた遠隔監視システムについては、副作用の管理における有効性を証明する研究があるものの、多くが単一医療機関の短期間の研究であり、広範な結論を引き出せていない。

 このたび研究グループは、5カ国(英国、アイルランド共和国、オーストリア、ギリシャ、ノルウェー)12カ所のがんセンターで、乳がん、大腸がん、またはホジキン/非ホジキンリンパ腫により化学療法を受ける829人(18歳以上)を対象として、24時間遠隔監視システムの効果を検証した。
 患者をほぼ同数の2群に無作為に分け、一方にはAdvanced Symptom Management System(ASyMS)による24時間のモニタリング、一方にはそれぞれのセンターにおける標準治療を受けてもらい、6サイクルにわたって症状の負荷レベルや支援の必要性、不安感、仕事の制限、QOLについて比較した。
 携帯型のASyMS装置を用いて、症状に関する質問票に毎日記入すると、対応が必要な場合が自動的に判断されて、センターの医師に警告が届く。同時に、患者には自分で症状を制御する方法に関してアドバイスや情報が提供される。

大部分の評価項目で優位

 こうして判明したのは、症状の負荷レベルに関して、ASyMS群では化学療法開始前と同様であったのに対し、標準治療群では1サイクル目から増大したことだ。心身の症状および各症状に関連する苦痛のレベルも、ASyMS群で大きく低下した。
 また、全サイクルにわたりASyMS群のほうが、健康関連のQOLが高く、不安感の平均スコアが低かった。患者が自らケアに関与する能力・自信も高く、支援ケアの必要性は低かった。ASyMSは安全性も十分であった。

 技術的な問題や、今回は患者の大部分(80%以上)が女性で、乳がんが最も多かったなどの検証内容の限界があるものの、これまでで最大規模の試験の結果として、ASyMSのようなエビデンスに基づく遠隔監視システムは、がん患者のケアに導入して効果が得られる可能性があると研究グループは結論。COVID-19のパンデミックによるケア形態の多様化に際して特に重要になるのではないかと指摘している。

www.bmj.com

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執筆/編集/審査監修/AI担当

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表/ 獣医師 ジャーナリスト。日経BP、エムスリーなどに所属し、医療や健康、バイオなどの分野を取材。

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