新型コロナワクチン躊躇に対処する臨床機関のエビデンスに基づいた戦略についての総説が報告されている。新型コロナワクチン接種プログラムは、反論の余地のない科学的な安全性データと、国民の受け入れ率と人口カバー率の高さにかかっていると指摘。ワクチン接種に対する不満を増大させる可能性がある要因として次の要素を挙げる。一つは、ワクチン開発の急速なペース、もう一つは、一般的なメディアやソーシャルメディアにおける誤報、もう一つは、二極化した社会政治的環境、さらに、もう一つは、大規模なワクチン接種の取り組みに内在する複雑さ。
エビデンスに基づく戦略として、一つは、医師と患者との間の関係への対処が必要とする。医師は患者にとって最も信頼できる情報源だと指摘。会話型および参加型の言葉ではなく、推定的および発表型の言葉の方が、接種率が高まるという研究があるという。本日接種するのをどう思うかと問いかけるのではなく、本日接種することになります、と伝えるのがよいというもの。
もう一つは、個人に対する対処として次のように説明する。患者に対しては、患者の躊躇につながる壁に対処するたえに誤解を解く、価値観を肯定する。誤情報に対応した説明をする。事実を繰り返す。新型コロナウイルス感染症は、疲労や関節痛、睡眠障害などの健康障害が長く続き、衰弱するが、ワクチンを接種することで自分だけではなく、家族や友人を守る。一般的なメディアでセンセーショナルに伝えられる安全性や副作用、ワクチンの必要性についての懸念は誤解に基づく、ワクチン接種による安全性や副作用は一時的で軽度なものになっているといった情報を伝えること。臨床医に対しては、ワクチン接種に関わる情報を得るための教育が必要になると説明する。
組織レベルでの対処も効果があると説明する。看護師訪問のための常備指示書の利用、監査とフィードバック、リマインダーおよびリコールシステム、ポイントオブケアの手助け、在宅訪問など。監査とフォードバックは臨床家に予防接種実績指標を定期的に提示するもの。ポイントオブケアの手助けは、ワクチン接種記録のレビューや電子的な臨床意思決定支援を通じて臨床場面で予防接種の推奨を知らせること。
こうした複数のレベルでの対処を通じて接種が広げられると説明している。
2021年3月、米国総説。
Finney Rutten LJ, Zhu X, Leppin AL, Ridgeway JL, Swift MD, Griffin JM, St Sauver JL, Virk A, Jacobson RM. Evidence-Based Strategies for Clinical Organizations to Address COVID-19 Vaccine Hesitancy. Mayo Clin Proc. 2021 Mar;96(3):699-707. doi: 10.1016/j.mayocp.2020.12.024. Epub 2020 Dec 30. PMID: 33673921.