初期の自己申告の症状に基づいて個人が感染している確率を推定する、新型コロナの早期発見のためのモデルが検証されている。実現する可能性もあるようだ。
英国の研究グループがモバイルヘルス専門誌『The LANCET Digital Health』で2021年9月で報告している。
自己申告で早期発見を
研究によると、新型コロナ(COVID-19)パンデミックの際に自己申告された症状は、感染の可能性がある病巣を特定するための人工知能モデルの学習に使用されてきた。しかし、これらのモデルでは、症状のピーク時のみを考慮し、感染の早期発見には適していない。
このたび英国の研究チームが初期の自己申告の症状に基づいて、個人がSARS-CoV-2に感染している確率を推定し、タイムリーな自己隔離と緊急検査を可能にすることを目指し、大規模な前向き疫学サーベイランス研究を実施した。
この研究では、英国の参加者から得られた、症状発症後3日間の19の症状に関する前向き、観察的、縦断的な自己申告データと、携帯電話アプリ「COVID-19 Symptom Study」から抽出した新型コロナPCR検査結果が用いられた。
研究チームは、研究集団をトレーニングセット(2020年4月29日から2020年10月15日までに症状を報告した人:18万2991人)とテストセット(2020年10月16日から2020年11月30日までに症状を報告した人:1万5049人)に分けている。その上で、自己報告された症状を分析するために3つのモデルを使用した。3つのモデルとは、英国国民健康保険サービス(NHS)のアルゴリズム、ロジスティック回帰、研究チームが設計した階層的ガウス過程モデル。研究チームのモデルは、新型コロナ特有の症状のほか、併存疾患、臨床情報を考慮するもの。
新型コロナ陽性を予測するモデルの性能をテストセットにおける感度、特異度、受信者動作特性曲線下面積(AUC)の観点から比べた。
階層型ガウス過程モデルにおいては、職業、性別、年齢、肥満度で層別した集団サブグループにおいて新型コロナの早期発見における症状の関連性も評価した。
感染拡大の抑制の鍵
こうして判明したのは、新型コロナの早期発見は研究チームの開発した階層型ガウスプロセスモデルで実現可能であるということ。
3日間の自己申告症状で学習した場合、階層的ガウス過程モデルの予測AUCは、ロジスティック回帰モデルやNHSアルゴリズムよりも高かった。
階層型ガウス過程モデルを用いて早期発見ができれば、新型コロナの感染拡大を抑制し、医療資源の効率的な配分に資する可能性があると研究グループは指摘している。
https://www.thelancet.com/journals/landig/article/PIIS2589-7500(21)00131-X/fulltext