2020年には、COVID-19パンデミックによる景気後退を原因として、低〜中所得国で1歳以下の幼児の死亡数が26万7000人増加したと思われる。これはパンデミックがなかった場合の推定死亡数の7%に相当するという。
世界銀行の経済専門家による研究グループが、英国医師会誌BMJのオンラインオープンアクセス誌『BMJ Open』で8月に発表した。

高所得国とは異なる影響

COVID-19が直接的に幼児の死亡率に及ぼす影響は比較的小さいが、特に低〜中所得国では、医療システムと経済に及ぼす影響のせいで、間接的に幼児の死亡率上昇につながる可能性が高い。
プライマリケアやワクチンなどの基本的に必要な医療を受けられないという事態が現実となっている一方、世界経済はパンデミック1年目で5%近く縮小し、貧困人口は1億2000万人増加する見込みである。
このような経済的な打撃は一般的に、高所得国とは異なって低〜中所得国において、子どもや高齢者などの脆弱な人口集団の死亡率増加をもたらす。

研究グループは今回、パンデミックにより予想されるGDP(国内総生産)の低下という総合的な経済的打撃が、低〜中所得国において1歳以下の幼児の死亡率に及ぼす影響を調べた。
具体的には、発展途上国の女性をサンプリングして行われている世界的な人口保健調査(Demographic  and  Health Surveys)のデータから、1985〜2018年の出生数520万人を割り出し、世界開発指標(World Development Indicators)による国民一人当たりGDPのデータと、国際通貨基金(IMF)による2019年と2020年の経済成長予想を用いて、景気後退が幼児死亡率に及ぼす影響を128か国について予想した。
520万人の大部分(82%)が、低〜低中所得国であった。

セーフティネット強化必要

こうして判明したのは、COVID-19パンデミックがなかった場合の予想に比べて、2020年の低〜中所得国における幼児の死亡数がおよそ26万7000人(約7%)増加したことだ。
増加が最も多かったのは南アジアで(8か国合計11万3000人)、全増加分の3分の1以上をインドが占めた(およそ10万人)。インドは年間出生数が最も多く、2020年の経済悪化もマイナス17.3%と特に大きかった。

自然災害や政治的要因など、2020年の経済成長予想に影響を及ぼす要素はパンデミックに限らない上、今回の研究ではGDPの短期的な影響しか考慮していない。
それでも、幼児の死亡増加数が多いことは確かであり、この年齢グループがパンデミックなどによる総合的な経済的打撃に対して脆弱であることが分かると研究グループは指摘。
COVID-19の予防と治療が最優先であることは変わらないが、社会的なセーフティネットの強化と基本的な医療の継続的な確保にも努める必要があると結論している。

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pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

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執筆/編集/審査監修/AI担当

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表/ 獣医師 ジャーナリスト。日経BP、エムスリーなどに所属し、医療や健康、バイオなどの分野を取材。

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