症状の現れ方や進行の仕方が異質であるパーキンソン病の機械学習を用いた縦断的データ研究が実施され、個人内および個人間のばらつきや薬の効果を考慮した、初期パーキンソン病の統計的進行モデルが開発された。
米国の研究グループが、モバイルヘルス専門誌『The LANCET Digital Health』で9月に発表した。
パーキンソン病の早期発見を
パーキンソン病は、症状の現れ方や進行の仕方が人によって異なっている。この2つの側面の理解が深まれば、より良い患者管理が可能になり、臨床試験のデザインも改善されると見られていた。
パーキンソン病の進行をモデル化して、アルゴリズムに従って検出する従来のアプローチは、患者群の一部の進行を踏まえたもので、複雑な薬物効果を十分に考慮していなかった。そこで、研究チームは個人内、個人間の変動と薬の効果を考慮したパーキンソン病の統計的進行モデルを開発に着手した。
今回の縦断データ研究では、「Parkinson’s Progression Markers Initiative(PPMI)」の縦断観察研究から、早期パーキンソン病患者423人と健常対照者196人について、最長7年間のデータを収集した。疾患の状態を定義するために、対照的な潜在変数モデルを適用した後、新しい個人化された入出力隠れマルコフモデルを適用した。
疾患状態の臨床的意義は、学習段階では使用されなかった7つの主要な運動または認知のアウトカム(軽度認知障害、認知症、ジスキネジア、運動変動の有無、運動変動による機能障害、ホーン-ヤールの重症度分類、死亡)に関する統計的検定を用いて評価した。
評価結果は、米国国立神経疾患・脳卒中研究所のパーキンソン病バイオマーカープログラム(PDBP)に登録されている610人のパーキンソン病患者を対象とした独立したサンプルで検証された。PPMIデータは2018年7月25日、投薬情報は2018年9月24日、PDBPデータは2020年6月15日から6月24日の間にダウンロードされた。
このモデルでは、8つの疾患状態が検出されて、主に機能障害、振戦、徐脈、精神神経系の指標によって区別されている。
初期パーキンソン病の統計的進行モデル
こうして判明したのは、終末期の状態である「ステート(状態)8」では、記録された19人のうち18人(95%)が認知症であるなど、主要な臨床転帰の有病率が最も高かったこと。
研究開始時には333人の患者のうち4人(1%)がステート8にあり、5年目には333人の患者のうち138人(41%)がステート8に達したということ。
しかし、開始時の状態の順位と、5年以内にステート8に到達する順位は一致しなかった。全体として、ステート5でスタートした患者は、終末期状態までの期間が最も短かった(中央値2.75[95%CI 1.75-4.25]年)。
研究グループは、これらの結果を基に、個人内・個人間のばらつきや薬の効果を考慮した、初期パーキンソン病の統計的進行モデルを開発した。この予測モデルは、非連続的で重複する疾患進行の軌跡を発見し、非決定論的な疾患進行モデルの使用を支持している。ただし静的なサブタイプの割り当てではパーキンソン病の進行の全領域を把握することができない可能性を示唆している。
https://www.thelancet.com/journals/landig/article/PIIS2589-7500(21)00101-1/fulltext