米国国立労働安全衛生研究所を中心とした研究グループが2022年11月13日、コロナ禍での職場の暴力とメンタルヘルスとの間の分析結果を報告した。これは予防医学の専門誌であるAmerican Journal of Preventive Medicine誌に掲載された。
その論文の要点は次の通りだ。
コロナ禍の公衆衛生関連の業務に従事している人を対象として、職場暴力の蔓延状況、メンタルヘルス症状との関連を調べている。2021年4月にオンライン調査を実施している。
その結果、2万6174人のうち32%が職場暴力を経験していた。割合が高かったのは、管理職、芸術/デザイン/エンターテイメント/スポーツ/レクリエーション、看護職。
週当たりの労働時間や人前での交流が増えるにつれて職場暴力を経験する可能性も高くなった。
何らかの職場暴力を経験することはがうつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安症、自殺念慮の可能性の上昇と有意に関連した。
うつ症状、不安症、PTSD、自殺念慮の有病率は、職場暴力以外の関連した要素(交絡因子)の影響を除く調整を起こった後、それぞれ1.21倍、1.21倍、1.31倍、1.26倍に上昇した。
職場暴力の回数が増えるほどにメンタルヘルスの症状を報告する可能性が増えた。
以上が論文で示されている内容となる。
コロナ禍は人と接する機会は減ったが、今回の調査対象となった公衆衛生に関連した仕事に従事する人たちは、感染対策などのために仕事が増加して、ストレスにさらされる場面も多いと予想できる。そうした状況下で、職場での暴力に遭遇する場面もあるようで、それがメンタルヘルスの状態を悪化させる要因になっていたということで、多忙な業務をさらに困難にしたものと見られる。
また、このような職場暴力は一般の職場でも発生する可能性があるものである。パワハラと呼ばれ、対策は強化されているが、なかなか減らないものでもある。今回の研究結果を踏まえると、職場暴力は従業員のメンタルヘルス症状の可能性を大幅に上昇させ、自殺念慮の可能性まで高めることが示されている。職場暴力は仕事の市場のために必要というものではなく、回避するために注意深く、問題の発生しやすい場所に入り込んで対処するのが重要だろう。
参考文献
Tiesman HM, Hendricks SA, Wiegand DM, Lopes-Cardozo B, Rao CY, Horter L, Rose CE, Byrkit R. Workplace Violence and the Mental Health of Public Health Workers During COVID-19. Am J Prev Med. 2022 Nov 14;64(3):315–25. doi: 10.1016/j.amepre.2022.10.004. Epub ahead of print. PMID: 36464557; PMCID: PMC9659550.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36464557/