STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、医薬品・医療技術の進展や公衆衛生上の重要な研究に光を当てる専門メディアである。医療・健康に関するリアルワールドデータの分析を通じて、生活習慣病対策の社会的意義を検証することを目的として日々情報発信を行っている。今回紹介するのは次の通り。
日本イーライリリーは、肥満に関連する健康障害を有する日本人集団を対象に、肥満症と医療費の関係を検討した初の包括的リアルワールド研究を発表した。この研究では、健康保険組合加入者約24万人のBMIと医療費の推移を5年間にわたり観察し、肥満の程度による医療費の違いを明らかにした。
- 発表元→日本イーライリリー
- 発表日→2025年5月26日
- 研究の背景→肥満は高血圧や2型糖尿病など複数の健康障害を引き起こし、医療費に影響を与えるとされるが、日本人における包括的な定量評価は未実施であった
- 研究の目的→日本人の肥満症が医療費に与える影響を明らかにすること
- 研究手法→2012年~2018年のBMIデータを用いたコホート解析。肥満症群(BMI≧25)と非肥満群(BMI<25)に分類し、5年間の総医療費をガンマ回帰分析で評価
- 対象集団→肥満症群:93,933人、非肥満群:150,217人(全員が肥満に関連する健康障害を少なくとも1つ有する)
- 結果→肥満症群では非肥満群よりも5年間の総医療費が統計学的有意に高く、BMIが27以上の群で特に著しかった
- 重要な知見→肥満症群が総医療費増加額の約2割(19.5%)を占め、肥満度が高いほど1人当たりの医療費増加も大きかった
- 図の解釈→BMI別の医療費増加分を色別に示し、BMI35以上の高度肥満群では非肥満群と比べて1人当たり年間76,122円の差が生じた
- 社会的意義→肥満症の人口を減らすことで、日本全体の医療費増加を抑制できる可能性が示唆され、公衆衛生政策への活用が期待される
- 調査の限界→BMIの経年変化や新規健康障害の発症は評価されておらず、あくまでベースラインBMIに基づいた解析結果である
