米国のライス大学とベイラー医科大学の研究グループは、乳がん生存者のがんの骨への転移を抑制する「糖鎖免疫チェックポイント阻害薬」の研究開発が進展していることを発表している。国防総省からの230万ドルの助成金の支援を受け、ヒト臨床試験の実現に向けて技術をさらに検証する。

乳がんの転移の背景と骨転移をターゲットにした新たな手法

乳がんは他の臓器に転移することが多く、生存者の40%が転移を経験すると言われる。このうち骨転移は3分の2以上を占め、全身にがんが広がる大きな要因となる。

従来使用されているチェックポイント阻害薬は、がん細胞上の免疫抑制タンパク質をブロックすることで、免疫系ががん細胞を認識し破壊することを可能にし、がん治療に大きな変化をもたらした。しかし、承認されているチェックポイント阻害薬は、骨の免疫が抑制されやすい環境のため、骨転移したがん細胞に対する効果が限定的であった。

それに対して、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターが開発した治療法は、骨転移したがん細胞に多く含まれる、タンパク質と糖からなる分子、特定の糖タンパク質をターゲットにしたものである。これが糖鎖免疫チェックポイント阻害薬で、ライス大学とベイラー医科大学の研究グループは自ら特定した糖タンパク質をターゲットした糖鎖免疫チェックポイント阻害薬の開発を進め、前臨床試験で、がんが完全に消滅した動物を確認するなどの成果を上げてきた。

がんが完全に消滅した動物も

研究グループは試験や改良のために、国防総省から230万ドルのブレークスルーII賞を得た。骨転移における糖鎖免疫チェックポイント阻害により、骨転移やその後の多臓器転移をどのように妨げることができるかを明らかにしていく。新たながん治療薬として今後注目される可能性がある。

参考文献

Rice, Baylor developing ‘glyco-immune’ checkpoint inhibitor
https://news.rice.edu/news/2023/rice-baylor-developing-glyco-immune-checkpoint-inhibitor

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執筆/編集/審査監修/AI担当

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表/ 獣医師 ジャーナリスト。日経BP、エムスリーなどに所属し、医療や健康、バイオなどの分野を取材。

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