STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、最先端の科学技術や医療、環境、社会課題への挑戦など、多岐にわたる分野に焦点を当てた研究成果を紹介している。世界中で展開される先端的な取り組みから、未来を見据えた革新の兆しを伝えるメディアとして、信頼ある情報発信を行っている。今回は、がんの新しい治療法として注目されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に関する東京大学らの研究成果を紹介する。
東京大学大学院総合文化研究科の研究グループは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)において、液体のりにも使用されるポリビニルアルコール(PVA)を活用した製剤を開発した。従来、BNCTで使用されるホウ素薬剤4-L-ボロノフェニルアラニン(BPA)は腫瘍内に長くとどまることが難しく、治療中の持続点滴が必要だった。
今回の研究では、BPAにPVAとソルビトールを加えた「PVA-sorbitol-BPA」製剤を開発し、マウスの胸部悪性腫瘍モデルでその効果を検証。結果として、腫瘍内におけるホウ素の集積性と滞留性が大幅に向上し、治療後の生存期間も有意に延びた。副作用の指標である腎機能や細胞毒性マーカーも大きく低下しており、安全性にも配慮された製剤設計となっている。
この成果は、難治性腫瘍の一つである悪性胸膜中皮腫に対する新たな治療選択肢の可能性を示しており、今後の臨床応用に向けた研究が加速される見通しである。
- 発表元→東京大学、京都大学、ステラファーマ株式会社
- 発表日→2025年7月30日
- 研究の目的→BNCTの治療効果を高め、副作用を低減する新しいホウ素薬剤製剤の開発
- 新規製剤→PVA-sorbitol-BPA。PVAとソルビトールを添加したBPA製剤
- 対象疾患→悪性胸膜中皮腫(アスベスト曝露が原因となる難治性腫瘍)
- 研究手法→マウスの胸部腫瘍モデルを用いたBNCT治療の評価
- 主な成果→腫瘍への高い集積性と滞留性、生存期間の有意な延長、安全性の向上
- 今後の展望→臨床応用に向けた非臨床試験の推進、深部腫瘍へのBNCT適応拡大
- 掲載誌→International Journal of Pharmaceutics
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください)
★★★★☆(★4つで2番目の評価)
BNCTの弱点であった薬剤の腫瘍内滞留性を改善し、治療効果を高める新製剤が開発された点は臨床への進展性が高い。特に、悪性胸膜中皮腫のような治療困難ながんに対する応用が期待される。ただし、現段階では動物モデルでの成果にとどまる。
