胸腔鏡下食道手術が開胸手術に劣らない生存率を実証、国がん・慶應・浜松医大

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国立がん研究センター、浜松医科大学、慶應義塾大学医学部、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、胸腔鏡下食道切除術が開胸手術に劣らない生存成績を示すことを明らかにし、切除可能食道がんの新たな標準治療としての有効性を世界で初めて報告した。研究成果は2025年10月14日付(英国時間)で国際誌『The Lancet Gastroenterology and Hepatology』に掲載された。

食道がんは、頸部から胸部、腹部にかけて広範囲に及ぶ臓器を対象とする手術が必要であり、患者への身体的負担が大きい。これまで標準的治療とされてきた開胸手術に代わる、低侵襲で安全な治療法として胸腔鏡下手術の有効性が注目されてきたが、長期的な生存成績を比較した科学的検証はこれまで存在しなかった。

今回のJCOG1409試験(MONET Trial)は、臨床病期I~III期(T4除く)の切除可能な胸部食道扁平上皮がん患者300名を対象に、開胸手術群(A群)と胸腔鏡下手術群(B群)を無作為に比較した第III相臨床試験である。主要評価項目である全生存期間の解析では、胸腔鏡下手術群が開胸群に対して統計学的に非劣性であることが示された(ハザード比0.64[98.8%信頼区間0.34–1.21]、p=0.000726)。

3年生存率は開胸群で70.9%、胸腔鏡下群で82.0%と、低侵襲手術群で良好な結果を示した。さらに、術後3か月時点での呼吸機能低下は、開胸群で12.5%、胸腔鏡下群で9.7%にとどまり、術後回復およびQOL改善の優位性が明らかになった。

合併症発生率は両群で大きな差はなかったものの、胸腔鏡下手術では術後肺炎や縫合不全の発生率がわずかに低い傾向が認められた。これらの結果から、胸腔鏡下手術は開胸手術に比べて侵襲が少なく、患者の機能回復と長期予後の両立を可能にする治療法であることが示された。

今後、胸腔鏡下手術に加えてロボット支援下手術の導入が進むことで、より高精度かつ低侵襲な治療の確立が期待される。

  • 研究機関→ 国立がん研究センター、浜松医科大学、慶應義塾大学医学部、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
  • 試験名→ JCOG1409 MONET試験(臨床病期I~III期食道がんにおける開胸 vs 胸腔鏡下手術の比較)
  • 対象患者→ 300名(国内31施設)
  • 登録期間→ 2015年5月~2022年6月
  • 主要評価項目→ 全生存期間(OS)
  • 結果→ 胸腔鏡下手術群の生存率が開胸群に劣らず、呼吸機能低下率が低下
  • 発表誌→ The Lancet Gastroenterology and Hepatology(2025年10月14日掲載)
  • DOI→ 10.1016/S2468-1253(25)00207-9
  • 研究代表者→ 北川雄光(慶應義塾大学医学部)、竹内裕也(浜松医科大学)

AIによる情報のインパクト評価(参考):

★★★★★

短評:胸腔鏡下食道手術が初めて長期生存率で開胸手術に並んだことを示した画期的研究。低侵襲化の潮流を確立するエビデンスとして国際的に高く評価される成果であり、食道がん治療標準の再定義を促す。

参考文献

慶應義塾大学プレスリリース「胸腔鏡下手術が切除可能食道がんの新たな標準治療に」
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2025/10/30/28-170322/
Hiroya Takeuchi et al. (2025). Thoracoscopic versus open oesophagectomy for patients with oesophageal cancer (JCOG1409 MONET): a multicentre, open-label, randomised, controlled, phase 3, noninferiority trial. The Lancet Gastroenterology & Hepatology. DOI: 10.1016/S2468-1253(25)00207-9

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