ミトコンドリア翻訳の速度と制御を可視化、理化学研究所と東京大学が新手法「MitoIP-Thor-Ribo-Seq法」を開発
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理化学研究所と東京大学などの共同研究グループは、ミトコンドリア翻訳の動態を高精度に観測する「MitoIP-Thor-Ribo-Seq法」を開発し、エネルギー産生と疾患に関わる新たな知見を報告した。
今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】ミトコンドリア翻訳のみを高解像度に解析できる「MitoIP-Thor-Ribo-Seq法」を新たに開発した。
- 【要点②】ヒトとマウスの細胞で、ミトコンドリア翻訳の速度や開始頻度が細胞種によって大きく異なることを定量的に示した。
- 【要点③】ミトコンドリアtRNA修飾やMELAS関連変異により、特定コドン上でリボソーム停滞と「渋滞」が生じることを明らかにした。
概要
ミトコンドリアは細胞内の主要なエネルギー供給源であり、独自のゲノムと翻訳装置を持つが、その翻訳動態を網羅的かつ選択的に測定する手法は限られていた。
従来のリボソームプロファイリング(Ribo-Seq)は細胞質のシグナルが大部分を占めるため、ミトコンドリア翻訳だけを高解像度で解析することが難しい状況であった。
今回、共同研究グループはミトコンドリアを免疫沈降で効率的に回収し、少量のリボソームフットプリントを増幅して解析する「MitoIP-Thor-Ribo-Seq法」を確立した。
この手法により、ミトコンドリア翻訳の速度、翻訳開始頻度、リボソーム分布などをコドン単位で多検体にわたり測定することに成功した。
さらに、ミトコンドリアtRNA修飾やミトコンドリア病MELASに関連する変異が翻訳制御に与える影響を網羅的に評価している。
詳細
- 発表元→ 理化学研究所、東京大学、東北大学、熊本大学などの共同研究グループ
- 発表日→ 2025年11月13日(日本時間。論文オンライン掲載は2025年11月12日)
- 研究領域→ ミトコンドリア翻訳、RNAシステム生化学、分子生物学
- 研究の背景→ 細胞質翻訳のシグナルが大きな背景となり、ミトコンドリア翻訳のみを高精度に解析することが困難であった。
- 開発した手法→ MitoIP-Thor-Ribo-Seq法(ミトコンドリア免疫沈降とRNA増幅技術を組み合わせたミトコンドリア特異的リボソームプロファイリング)
- 技術的特徴→ ミトコンドリアリボソームを濃縮した状態でフットプリントを取得し、コドン1つ分の分解能で翻訳動態を解析できる点が特徴である。
- 主な解析対象→ ヒト腎由来HEK293細胞、マウス筋芽細胞C2C12細胞、MELAS患者由来筋芽細胞
- ミトコンドリア翻訳速度→ HEK293細胞では翻訳伸長速度は1秒当たり約0.5コドン、翻訳開始は平均約435秒に1回と推定され、細胞質翻訳よりかなり遅いことが示された。
- 細胞種間の違い→ C2C12細胞では伸長速度が1秒当たり約1.0コドン、翻訳開始は平均約173秒に1回と、HEK293細胞より速いことが示され、細胞種によるミトコンドリア翻訳動態の違いが明らかになった。
- mt-tRNA修飾の解析→ ウォブル位置や隣接塩基に存在する複数のmt-tRNA修飾を欠損させた細胞で解析を行い、特定コドン上でのリボソーム停滞など、修飾異常が翻訳の滑らかさと読み取り精度に大きく影響することを示した。
- 疾患との関連→ MELASの原因となるA3243G変異を持つ筋芽細胞では、UUGコドン上でミトコンドリアリボソームが選択的に停滞し、後続リボソームとの衝突による「渋滞」が発生していることが示された。
- 臨床的含意→ ミトコンドリア病や加齢に伴うエネルギー代謝異常において、翻訳速度やtRNA修飾異常がどのように関与するかを理解するうえで基盤情報となる可能性がある。
- 制限事項→ 主に培養細胞を用いた解析であり、さまざまな組織や生体内環境での翻訳動態については今後の検証が必要である。
- 掲載誌→ Molecular Cell(論文タイトル「Monitoring the complexity and dynamics of mitochondrial translation」)
AIによるインパクト評価
評価(参考): ★★★★☆
ミトコンドリア翻訳に特化した高解像度の網羅解析手法を提示し、翻訳速度の絶対値やtRNA修飾異常・疾患変異に伴うリボソーム停滞を体系的に示した点で、基礎研究としてのインパクトは大きい。
一方で、臨床応用には今後の検証が必要であり、現時点では病態解明と創薬標的探索のための重要な基盤技術と位置付けられる。
3言語要約 / Multilingual Summaries
🌍 English Summary
Note: This is an AI-assisted translation for reference, optimized for clarity beyond typical auto-translation.
- The team developed MitoIP-Thor-Ribo-Seq, a mitochondria-focused ribosome profiling method that enables codon-level analysis of mitochondrial translation dynamics.
- Using human HEK293 and mouse C2C12 cells, the study quantified slow and cell type–dependent mitochondrial translation rates and initiation frequencies compared with cytosolic translation.
- Systematic analyses revealed that mt-tRNA modifications and a MELAS-associated A3243G mutation induce codon-specific ribosome stalling and ribosome collisions on mitochondrial mRNAs.
🇨🇳 中文摘要
注:以下内容为人工智能辅助生成,仅供参考,旨在比一般自动翻译更清晰。
- 研究团队建立了专门针对线粒体翻译的新方法 MitoIP-Thor-Ribo-Seq,可在密码子分辨率下系统分析线粒体核糖体的动态。
- 在人体HEK293细胞和小鼠C2C12细胞中,研究定量显示线粒体翻译速率和起始频率明显慢于细胞质翻译,并且在不同细胞类型之间存在显著差异。
- 对线粒体tRNA修饰缺失株及携带MELAS相关A3243G突变的细胞进行分析,发现特定密码子上发生核糖体停滞和“拥堵”,提示这些因素在疾病相关翻译异常中发挥重要作用。
🇮🇳 हिन्दी सारांश
ध्यान दें: यह एआई की सहायता से तैयार किया गया संदर्भ用 सार है, जिसे सामान्य स्वतः अनुवादより अधिक स्पष्ट बनाने का प्रयास किया गया है।
- शोध समूह ने MitoIP-Thor-Ribo-Seq नामक नई तकनीक विकसित की, जो विशेष रूप से माइटोकॉन्ड्रिया में होने वाली ट्रांसलेशन को कोडन स्तर पर व्यापक रूप से मापने में सक्षम है।
- मानव HEK293 और चूहे के C2C12 कोशिकाओं में解析 से पता चला कि माइटोकॉन्ड्रियल ट्रांसलेशन की伸長 गति और開始頻度 कोशिका質トランスレーション की तुलना में धीमी है और細胞種によって大きく異रती है。
- mt-tRNA संशोधन की कमी और MELAS से जुड़ी A3243G म्यूटेशन वाले कोशिकाओं में、特定 कोडन पर राइबोसोम रुकावट और टकराव見े गए, जो रोग関連翻訳異常 के मेकानिज़्म को समझने के लिए重要 संकेत देते हैं。

