STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学や医療、バイオテクノロジー分野における革新や課題の最前線に焦点を当て、最新の研究成果を通じて人類の健康と医療の未来を見据えるメディアである。日本国内外の大学や研究機関による重要な研究成果を紹介し、疾患の理解や治療法の進展が社会にもたらす影響を分析して届けている。今回紹介するのは次の通り。
非小細胞肺がんに対する分子標的薬オシメルチニブ(一般名オシメルチニブ)は、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異を有する患者に一時的に高い効果を示すが、多くの症例で短期間のうちに薬剤耐性が生じる問題があった。
金沢大学とカリフォルニア大学(University of California, San Francisco:UCSF)の共同研究により、この耐性メカニズムの一端が明らかになった。
ARID1A遺伝子変異が耐性獲得の鍵であること、さらにWEE1阻害薬の併用が耐性克服に有効であることが示された。
この発見は、今後の非小細胞肺がん治療に新たな道を開く可能性がある。
- 発表元→金沢大学(がん進展制御研究所、ナノ生命科学研究所、附属病院)/カリフォルニア大学
- 発表日→2025年6月13日(Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版掲載)
- 研究の背景→EGFR変異を有する非小細胞肺がんの治療にはオシメルチニブが用いられているが、短期間で耐性が生じ、特に脳や髄膜への転移例で治療が難しい状況であった
- 研究の目的→オシメルチニブに対する耐性獲得の分子メカニズムの解明と、耐性克服を目指した新たな治療標的の探索
- 研究の手法→マウスの髄腔内にEGFR肺がん細胞を移植し、オシメルチニブ耐性を獲得させた後に次世代シーケンス(NGS)により遺伝子変異を解析、さらにゲノムスクリーニングによりWEE1の治療標的性を評価
- 主な結果→耐性細胞ではARID1A変異が高頻度に認められ、ARID1Aの発現回復により耐性が消失した。WEE1遺伝子を標的とした治療で耐性細胞の死が促進された
- 臨床データの結果→110例中12例でARID1A変異が検出され、変異陽性例ではオシメルチニブ治療後の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に短かった。約58%の症例で脳転移を伴っていた
- 発表のポイント→ARID1A変異がEGFR肺がんの耐性と脳転移に関与し、WEE1阻害薬との併用が有効である可能性があることを動物実験および患者データの両面から示した
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください)
★★★★★(★5つで最高評価)
