STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、医療・健康データサイエンスの最新成果を社会的視点から伝えるメディアである。今回は、大塚製薬とDeSCヘルスケアによる「日本の就業者における疾病別の労働生産性損失」に関する研究成果が『Journal of Occupational Health』に掲載されたことを紹介する。
- 【要点①】日本の労働者3万人超のデータを用い、疾病別の生産性損失を可視化
- 【要点②】うつ病・不安障害・片頭痛が欠勤・プレゼンティーイズム双方で影響大
- 【要点③】女性では月経障害やアトピー性皮膚炎も生産性に大きく影響
大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区)は2025年10月7日、株式会社DeSCヘルスケアとの共同研究「日本の労働者における疾病別の労働生産性(Work productivity by diseases diagnosed among workers: a study using large-scale claims data and survey data of workers in Japan)」の成果が、日本産業衛生学会発行の学術誌『Journal of Occupational Health』に掲載されたと発表した。
本研究は、健康保険レセプトデータと健康調査データを組み合わせた約3万1,540人の就業者データを解析し、疾病ごとの欠勤(absenteeism)およびプレゼンティーイズム(presenteeism:勤務中の生産性低下)による労働損失を定量化した。精神疾患や慢性疾患による企業経済への影響を可視化することを目的としている。
その結果、うつ病、不安障害、統合失調症、双極性障害、不眠症などの精神疾患が男女ともにプレゼンティーイズムに強く影響していたほか、男性では双極性障害や片頭痛、女性では片頭痛や月経障害、下痢性疾患が欠勤に影響する傾向が示された。また、男女ともにアレルギー性鼻炎や消化器疾患(食道・胃・十二指腸疾患)が高い有病率と生産性低下を示した。
月経障害は特に女性のプレゼンティーイズムに強く影響し、アトピー性皮膚炎も男女差のある影響を示した。さらに、プレゼンティーイズムによる経済的損失は欠勤の約7倍に相当し、平均月次損失額は男性39,935円、女性39,004円と推定された。
京都大学大学院 医学研究科 公衆衛生学分野の中山健夫教授(共同著者)は、「健康保険データとアプリによる自己申告データを統合することで、就業者の健康状態と生産性を包括的に把握できた」と述べ、今後の詳細解析に期待を示した。
本成果は、企業の健康経営(Health and Productivity Management)推進や、産業保健政策の根拠データとしての活用が期待されている。
- 発表元→ 大塚製薬株式会社(日本)
- 発表日→ 2025年10月7日
- 共同研究機関→ 株式会社DeSCヘルスケア
- 掲載誌→ Journal of Occupational Health(日本産業衛生学会/Oxford Academic)
- 対象者数→ 31,540人(多職種の就業者)
- 主要分析項目→ 欠勤(absenteeism)・プレゼンティーイズム(presenteeism)による生産性損失
- 主な影響疾患→ うつ病、不安障害、双極性障害、統合失調症、片頭痛、アレルギー性鼻炎、月経障害など
- 経済的損失(推定)→ 欠勤:男性5,569円/女性4,403円、プレゼンティーイズム:男性39,935円/女性39,004円(1人あたり月間平均)
- 研究意義→ データ駆動型の健康経営支援および疾病別生産性コストの可視化
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★☆
大規模医療データと職場アンケートを統合解析した日本初の試みとして、疾病と労働生産性の関係を可視化した点で意義が大きい。企業の健康投資戦略や政策立案への応用が期待される。
参考文献
Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd. “Research on Work Productivity Among Japanese Workers Published in the Journal of Occupational Health — Visualizing the Impact of a Range of Diseases on Productivity Using Large-Scale Data —.”
https://www.otsuka.co.jp/en/company/newsreleases/2025/20251007_1.html
Journal of Occupational Health. Work productivity by diseases diagnosed among workers: a study using large-scale claims data and survey data of workers in Japan. 2025; Oxford Academic.
Kyoto University Graduate School of Medicine, Department of Health Informatics, press comment (2025).
