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STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、製薬業界の国際政策・経済動向を追っています。今回は、アストラゼネカが米国政府と締結した「薬価引き下げに関する歴史的合意」について紹介します。

  • 【要点①】アストラゼネカがトランプ政権と医薬品価格引き下げで歴史的合意を締結
  • 【要点②】最大80%の値引きで慢性疾患患者への直接販売を開始
  • 【要点③】今後5年間で米国内に500億ドルを投資し、製造と研究開発を強化

2025年10月10日、アストラゼネカ(AstraZeneca)は、ドナルド・J・トランプ米大統領政権との間で、米国患者に対する処方薬価格の引き下げを目的とした歴史的な合意を発表しました。この取り決めは、イノベーションを維持しながら薬価を大幅に引き下げる新たな枠組みとされています。

ホワイトハウスで行われた発表会では、アストラゼネカの最高経営責任者パスカル・ソリオ氏がトランプ大統領と共に出席し、同社が7月31日付で大統領から提示された4項目の要請すべてを自主的に履行したことを正式に確認しました。

合意の一環として、アストラゼネカは慢性疾患患者向けに最大80%割引の直接販売(Direct-to-Consumer:DTC)を開始します。これにより、処方箋を持つ患者は政府の新設プラットフォーム「TrumpRx.gov」を通じて、製薬会社から直接薬を割引価格で購入できるようになります。

さらに、商務省との合意により、アストラゼネカは関税法232条の適用を3年間猶予され、その間に米国内での製薬製造体制を完全に移行。5年間で500億ドル(約7兆5,000億円)を米国の製造・研究開発に投資し、2030年までに総収益800億ドルの達成を目指す計画です。そのうち50%を米国市場が占める見込みとされています。

ソリオCEOは、「アストラゼネカはがんや慢性疾患に苦しむ数百万人のアメリカ人を治療しており、今回の合意により、より多くの患者が低価格で命を救う薬にアクセスできるようになる。米国がイノベーションの中心であり続けるための新たなモデルになる」とコメントしました。

同社はすでにバージニア州における史上最大規模の新製造施設の建設を開始しており、体重管理・代謝疾患領域および抗体薬物複合体(ADC)治療の製造を支援する予定です。加えて、テキサス州コペルの拡張工場は来週正式稼働を迎えるほか、2026年にはメリーランド州ロックビルで細胞治療の新工場を、マサチューセッツ州ケンブリッジに第2の主要研究開発センターを開設予定です。

アストラゼネカは現在、米国内で19の研究開発・製造・商業拠点を運営し、25,000人以上の従業員を擁しています。これらの活動は、間接的に10万件以上の雇用を支え、2025年には米国経済に200億ドル超の価値を創出しました。

  • 発表元→ アストラゼネカ(AstraZeneca)
  • 発表日→ 2025年10月10日(米国時間)
  • 合意先→ 米国政府(トランプ政権)
  • 主な内容→ 医薬品価格の大幅引き下げおよび国内製造拡大
  • 価格施策→ 慢性疾患患者への最大80%割引の直接販売、TrumpRx.gov参加
  • 投資額→ 米国内製造・R&Dに5年間で500億ドル
  • 関税措置→ セクション232の適用を3年間猶予
  • 製造拠点→ バージニア州・テキサス州・メリーランド州・マサチューセッツ州で拡張中
  • 目的→ 医薬品価格の公平化とイノベーション維持の両立

AIによる政策・経済インパクト評価(参考):

★★★★★

今回の合意は、製薬企業が米国政府と直接協定を結び、価格是正と国内製造拡大を同時に進める初の事例として極めて重要です。医薬品アクセスの改善と、国内生産回帰を両立させる新しい産業モデルの転換点といえます。

参考文献

AstraZeneca. “AstraZeneca announces historic agreement with US Government to lower the cost of medicines for American patients.”
https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2025/astrazeneca-announces-historic-agreement-with-us-government-to-lower-the-cost-of-medicines-for-american-patients.html

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