STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、免疫疾患領域における小児治療の進展に注目しています。今回は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)の抗TNFα抗体製剤「シンポニ(Simponi, 有効成分:ゴリムマブ)」が、米国食品医薬品局(FDA)より小児潰瘍性大腸炎の治療薬として承認を受けたニュースを紹介します。
- 【要点①】シンポニが小児潰瘍性大腸炎に対してFDA承認を取得(体重15kg以上の患者対象)
- 【要点②】月1回投与の維持療法が可能な唯一の抗TNF治療薬
- 【要点③】第3相PURSUIT-2試験で6週時点の臨床寛解率32%、54週時点で持続寛解率57%
2025年10月7日、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、抗TNFα抗体シンポニ(Simponi, ゴリムマブ)が中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)を有する小児患者(体重15kg以上)に対して米国FDA承認を取得したと発表しました。
これにより、シンポニは成人に加えて小児UC患者にも使用可能となり、米国で100万人を超えるUC患者のうち、約20%を占める小児患者への治療選択肢が拡大しました。
ジョンソン・エンド・ジョンソン・イノベーティブメディスン消化器・自己抗体領域担当副社長 クリス・ガシンク博士は、「潰瘍性大腸炎は生涯にわたり複雑かつ難治な疾患であり、特に小児では承認済みの治療法が限られていました。今回の承認は、小児患者にとって重要な前進であり、安全性と有効性が確立された治療オプションを提供します」と述べました。
第3相PURSUIT-2試験の結果
FDA承認はPURSUIT臨床プログラムに基づいており、PURSUIT-2は小児UC患者を対象とした第3相多施設共同オープンラベル試験です。
- 臨床寛解率(第6週)→ 32%
- 臨床反応率(第6週)→ 58%
- 内視鏡的改善率(第6週)→ 40%
- 寛解維持率(第54週)→ 57%
安全性は成人UC試験での結果と一致しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
投与方法と用量
シンポニは皮下注射製剤として提供され、12歳以上の患者は適切なトレーニングを受けることで自己注射が可能です。
- 体重40kg以上: 200mgを0週、100mgを2週・6週に投与し、以後4週ごとに100mgを維持投与
- 体重15kg〜40kg未満: 100mgを0週、50mgを2週・6週に投与し、以後4週ごとに50mgを維持投与
小児UCにおいて月1回投与の維持療法を提供する唯一の治療薬であり、家庭での継続的な管理を可能にします。
臨床試験の概要
- 試験名→ PURSUIT-2(第3相、NCT03596645)
- 対象→ 2歳以上の中等度〜重度活動性潰瘍性大腸炎小児患者
- デザイン→ 多施設・オープンラベル試験
- 主要評価項目→ Mayoスコアによる臨床寛解率
- 副次評価項目→ 臨床反応率、内視鏡的改善、安全性
- 結果→ 主要および副次項目で臨床的に意義のある改善を確認
疾患背景と意義
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜の慢性的な炎症を特徴とし、下痢、血便、腹痛などを引き起こす疾患です。小児UCは成長や発達への影響が大きく、治療の早期開始と長期的コントロールが極めて重要です。
シンポニはこれまでに成人の関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎に承認されており、今回の承認で小児UCが5つ目の適応として追加されました。
AIによる臨床・社会的インパクト評価(参考)
★★★★☆
今回の承認は、小児炎症性腸疾患(IBD)治療のギャップを埋める重要なステップです。自己注射可能な月1回投与レジメンは、通院負担を軽減し、治療継続率の向上につながると期待されます。特に体重15kg以上の幼児層への適応拡大は臨床現場に大きな影響を与えるでしょう。
参考文献
Johnson & Johnson. “U.S. FDA approves Simponi (golimumab) for the treatment of pediatric ulcerative colitis.”
https://www.jnj.com/media-center/press-releases/u-s-fda-approves-simponi-golimumab-for-the-treatment-of-pediatric-ulcerative-colitis
ClinicalTrials.gov: NCT03596645 — PURSUIT-2 Study; NCT01900574 — PURSUIT Pediatric PK Study.
