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Astellasは、抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチン(enfortumab vedotin、商品名パドセブ)と免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の併用療法について、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する補助的治療および術前療法として、米国食品医薬品局(FDA)が優先審査(Priority Review)を受理したと発表した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- EV-303試験の結果に基づき、パドセブとキイトルーダ併用療法がMIBC術前・術後治療としてFDAの優先審査を取得。
- 併用療法は再発・進行・死亡リスクを60%低減し、死亡リスクを50%減少。
- 安全性は既報と一致し、新たな懸念となる有害事象は確認されなかった。
EV-303(KEYNOTE-905)試験は、シスプラチン投与が困難な筋層浸潤性膀胱がん患者を対象に、パドセブとキイトルーダを術前および術後に併用する治療の有効性を検証した第3相試験である。結果として、手術単独群と比較してイベントフリー生存率(EFS)が有意に延長し、再発、進行、または死亡のリスクを60%低減、全生存期間(OS)でも死亡リスクを50%減少させた。これらの成果は2025年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表され、MIBC治療の新たな標準となる可能性が示された。
- 発表元→ Astellas Pharma Inc.
- 発表日→ 2025年10月21日(東京発)
- 対象疾患→ 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)
- 研究の背景→ シスプラチンベースの化学療法が標準治療だが、約半数の患者は腎機能や併存症により投与不適格であり、有効な代替療法が求められていた。
- 試験デザイン→ 第3相試験(EV-303/KEYNOTE-905)。無作為化・3群比較(手術単独群 vs. キイトルーダ単独群 vs. パドセブ+キイトルーダ併用群)。
- 一次エンドポイント→ イベントフリー生存率(EFS)。
- 二次エンドポイント→ 全生存期間(OS)、病理学的完全奏効率(pCR)。
- 主要結果→ 併用療法群でEFSが60%改善、OSが50%改善。安全性は既知のプロファイルと一致し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。
- 安全性→ 重篤な皮膚障害(Stevens-Johnson症候群、TEN)などの既知リスクに注意が必要。末梢神経障害、間質性肺疾患(ILD)も一定割合で報告されているが、発現率は過去試験と同水準。
- 臨床的含意→ 手術前後を通した免疫・抗体薬物複合体併用療法が、シスプラチン不適格患者に対する新たな標準治療候補となる可能性。
- 制限事項→ 追跡期間が限定的であり、長期生存データおよび再発後治療の影響を今後検証する必要がある。
- 次のステップ→ FDAの審査目標日(PDUFA)は2026年4月7日。承認後は術前・術後一貫した治療戦略として導入が期待される。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
進行性膀胱がん治療におけるパラダイム転換の可能性を示す結果であり、シスプラチン不適格群における治療の空白を埋める重要なステップといえる。
参考文献
Astellas:PADCEV(enfortumab vedotin-ejfv)+KEYTRUDA(pembrolizumab)併用療法、筋層浸潤性膀胱がんに対しFDAが優先審査を受理
https://newsroom.astellas.com/2025-10-21-PADCEV-TM-enfortumab-vedotin-ejfv-Plus-KEYTRUDA-R-pembrolizumab-sBLA-Granted-FDA-Priority-Review-for-Treatment-of-Certain-Patients-with-Muscle-Invasive-Bladder-Cancer
ClinicalTrials.gov:EV-303(KEYNOTE-905)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT03924895

