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ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)は、シェーグレン病(Sjögren’s disease:SjD)を対象とした第2相試験「DAHLIAS」の結果を『The Lancet』誌に発表し、FcRn阻害抗体ニポカリマブ(nipocalimab)が疾患活動性と重症度を統計学的有意に低下させたことを報告した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】ニポカリマブは主要評価項目であるClinESSDAIスコアを有意に改善した。
- 【要点②】自己抗体価の低下と唾液分泌量の増加を伴い、症状(口腔乾燥、疼痛、疲労)も改善傾向を示した。
- 【要点③】安全性は良好であり、免疫抑制に伴う重篤感染や新たな安全性シグナルは認められなかった。
シェーグレン病は自己抗体産生と慢性炎症を特徴とする自己免疫疾患であり、現時点で根本的な治療薬は承認されていない。ニポカリマブは、FcRn(新生児Fc受容体)を標的とするモノクローナル抗体で、免疫グロブリンG(IgG)の分解を促進し、自己抗体レベルを低下させることを目的としている。
第2相試験DAHLIASでは、中等度から重度の活動性シェーグレン病患者163例を対象に、ニポカリマブ15 mg/kgまたは5 mg/kgを2週ごとに24週まで投与した。その結果、高用量群で主要評価項目ClinESSDAIスコアがプラセボ群に比べ有意に改善し(最小二乗平均差-2.65、90%信頼区間-4.03~-1.28、p=0.0018)、IgG自己抗体の低下と炎症マーカーの改善が確認された。
- 発表元→ Johnson & Johnson
- 発表日→ 2025年10月24日
- 対象疾患→ シェーグレン病(Sjögren’s disease:SjD)
- 研究の背景→ SjDは女性に多く、慢性炎症と自己抗体産生を伴うが、標準治療が確立していない。
- 試験デザイン→ 第2相試験(DAHLIAS)。多施設共同・無作為化・二重盲検・プラセボ対照。
- 一次エンドポイント→ ClinESSDAIスコアの変化量(統計学的有意差あり)。
- 二次エンドポイント→ 自己抗体価、唾液流量、疲労や疼痛などの患者報告アウトカム。
- 主要結果→ ClinESSDAIは平均-2.65ポイント改善。唾液流量改善(33%対16%)、乾燥症状と疲労の緩和傾向。
- 安全性→ 有害事象の発現率はプラセボ群と同程度。免疫グロブリン低下後も感染リスク上昇はみられず、救済治療の必要例なし。
- 臨床的含意→ 自己抗体依存性疾患におけるFcRn阻害療法の有望な選択肢となる可能性。
- 制限事項→ 試験期間が24週と短く、長期効果や再燃率の検証が必要。
- 次のステップ→ 第3相試験「DAFFODIL」が進行中であり、承認申請に向けたデータ収集が継続。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
シェーグレン病の疾患修飾を目指す初のFcRn阻害抗体として科学的意義が高い。短期間の試験ながら有効性と安全性が両立している点は重要。
参考文献
Johnson & Johnson「Published in The Lancet: Nipocalimab significantly decreased Sjögren’s disease (SjD) activity and severity through substantial reduction in Sjögren’s-related autoantibodies」
https://www.jnj.com/media-center/press-releases/published-in-the-lancet-nipocalimab-significantly-decreased-sjogrens-disease-sjd-activity-and-severity-through-substantial-reduction-in-sjogrens-related-autoantibodies
ClinicalTrials.gov:DAHLIAS(NCT04968912)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT04968912
The Lancet 掲載論文「Efficacy and safety of nipocalimab in patients with moderate-to-severe Sjögren’s disease(DAHLIAS)」
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01430-8/fulltext

