STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学技術・医療・ライフサイエンスの分野における研究成果を、中立的かつ正確に紹介するニュースメディアである。
ロシュ(Roche)は、抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ(obinutuzumab、商品名ガザイバ、Gazyva/Gazyvaro)が、ループス腎炎(lupus nephritis:LN)を対象に米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】ガザイバは、ループス腎炎に対する第2相NOBILITY試験および第3相REGENCY試験の結果に基づきFDA承認を取得。
- 【要点②】第3相REGENCY試験では、完全腎反応率(CRR)が標準治療単独群33.1%に対し、併用群で46.4%と有意に高かった。
- 【要点③】安全性は既存の血液がん適応でのプロファイルと一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデス(SLE)の重篤な合併症であり、放置すると腎不全に至ることもある。今回承認されたガザイバは、B細胞上のCD20抗原を標的とするタイプIIモノクローナル抗体であり、炎症性B細胞を除去することにより腎障害の進行を抑制する作用を有する。
第3相REGENCY試験(NCT04221477)では、ミコフェノール酸モフェチルとステロイドの標準治療にガザイバを併用した群で、標準治療単独群に比べて有意に高い完全腎反応率を達成した(46.4%対33.1%)。さらに、補体値の改善、抗二本鎖DNA抗体の低下、尿蛋白量の減少が確認された。副作用発現は既報と同様で、免疫関連有害事象や感染症リスクの増加は限定的であった。
- 発表元→ Roche(F. Hoffmann-La Roche Ltd)
- 発表日→ 2025年10月20日
- 対象疾患→ ループス腎炎(lupus nephritis:LN)
- 研究の背景→ ループス腎炎は世界で約170万人が罹患し、特に女性や有色人種に多い。従来治療では3分の1が末期腎不全に進行。
- 試験デザイン→ 第2相(NOBILITY)および第3相(REGENCY)。無作為化・二重盲検・多施設共同・プラセボ対照。
- 一次エンドポイント→ 完全腎反応率(CRR)(統計学的有意に改善)。
- 二次エンドポイント→ 補体C3/C4の変化、抗dsDNA抗体の低下、尿蛋白減少、ステロイド使用量の削減。
- 主要結果→ CRR:ガザイバ群46.4%対標準治療群33.1%。腎機能保全効果と免疫学的改善を示した。
- 安全性→ 血液腫瘍領域での安全性プロファイルと一致。重篤な感染症リスクは低く、新たな安全性懸念なし。
- 臨床的含意→ ループス腎炎における新たな標準治療候補となる可能性があり、B細胞標的療法の有効性を裏付け。
- 制限事項→ 長期転帰データが限定的であり、再発抑制効果の評価が今後の課題。
- 次のステップ→ 欧州医薬品庁(EMA)における承認審査中。小児・思春期対象の試験も進行中。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
ループス腎炎で初めて完全腎反応を有意に改善した抗CD20抗体の承認は臨床的意義が極めて大きい。治療戦略の転換点となる可能性がある。
参考文献
Roche「FDA approves Gazyva/Gazyvaro for the treatment of lupus nephritis」
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-10-20
ClinicalTrials.gov:REGENCY(NCT04221477)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT04221477
Furie RA, et al. N Engl J Med. 2025;392:1471–1483. 「Efficacy and safety of obinutuzumab in active lupus nephritis」.

