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ロシュ(Roche)は、筋層浸潤性膀胱がん(muscle-invasive bladder cancer:MIBC)を対象とした第3相試験「IMvigor011」において、アテゾリズマブ(atezolizumab、商品名テセントリク)が全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)で有意な延長を示したと発表した。本試験は、循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた初のグローバルな術後治療指針型試験として注目されている。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】テセントリクは、プラセボと比較して死亡リスクを41%、再発または死亡リスクを36%低減。
- 【要点②】ctDNA陽性例を対象とした初の第3相試験で、分子残存病変(MRD)検出に基づく精密治療を実現。
- 【要点③】安全性プロファイルは既報のテセントリク試験と一致し、新たな安全性上の懸念はなし。
IMvigor011試験(NCT04660344)は、根治的膀胱摘除術後に再発リスクの高いctDNA陽性の筋層浸潤性膀胱がん患者を対象に、テセントリクの補助療法効果を検証した無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験である。
中央追跡期間16.1カ月時点で、テセントリク群の無病生存期間中央値は9.9カ月、プラセボ群では4.8カ月であり(ハザード比0.64、95%信頼区間0.47–0.87、p=0.0047)、全生存期間中央値は32.8カ月対21.1カ月(HR=0.59、95%信頼区間0.39–0.90、p=0.0131)と有意な改善を示した。
本試験は、ナテラ社のSignatera検査を用いてctDNAを検出し、再発リスク層別化を行うことで、不要な治療を回避できる点でも意義がある。
- 発表元→ Roche(F. Hoffmann-La Roche Ltd)
- 発表日→ 2025年10月20日
- 対象疾患→ 筋層浸潤性膀胱がん(muscle-invasive bladder cancer:MIBC)
- 研究の背景→ MIBCは年間15万人以上が罹患し、術後の再発リスクが高く、精密治療の確立が求められていた。
- 試験デザイン→ 第3相試験(IMvigor011)。無作為化・二重盲検・プラセボ対照・グローバル試験。
- 一次エンドポイント→ 無病生存期間(DFS)(統計学的有意差あり)。
- 二次エンドポイント→ 全生存期間(OS)、安全性、ctDNA陰性化率。
- 主要結果→ DFS:HR=0.64(p=0.0047)、OS:HR=0.59(p=0.0131)。テセントリク群で有意な延長。
- 安全性→ 既報と同様のプロファイルで、新たな重篤有害事象なし。免疫関連有害事象は管理可能。
- 臨床的含意→ ctDNAによるMRD検出を利用した免疫療法の個別化を示す初のエビデンスであり、術後補助療法の新しい標準となる可能性。
- 制限事項→ 中期フォローアップデータのため、長期転帰の検証が必要。
- 次のステップ→ FDAなど規制当局への提出準備中。併用療法や他腫瘍種への適応拡大も進行。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
免疫療法とctDNA解析を融合した個別化補助療法の確立は、がん治療の大きな転換点であり、実臨床応用のインパクトは極めて高い。
参考文献
Roche「Tecentriq showed significant overall and disease-free survival benefits in bladder cancer with ctDNA-guided treatment」
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-10-20b
ClinicalTrials.gov:IMvigor011(NCT04660344)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT04660344
Powles T, et al. IMvigor011: A Phase 3 trial of ctDNA-guided adjuvant atezolizumab vs placebo in MIBC. Presented at ESMO 2025, Berlin.

