英国では、当初の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中、医療機関に入院したCOVID-19患者のおよそ10人に1人(11.1%)が、入院後に感染した院内感染だったという。
英国の様々な大学や研究機関、公衆衛生庁などからの研究グループが、医学誌『Lancet』で8月に発表した。
パンデミックに特化した研究のデータを分析
今回の研究は、COVID-19で入院した患者を対象とする大規模な前向きコホート研究である「ISARIC WHO CCP-UK」のデータを使用。参加している英国の病院(314か所)のCOVID-19患者で、2020年8月より前に感染した人の記録を調べた。
この研究は、2009年のインフルエンザA/H1N1と2012年のMERS発生により、研究や対応策の遅れが判明した英国で、再びパンデミックが起こった場合は短期間で起動できるように準備されていた一群の研究、対応策の中核となるものとなっている。
今回、新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)の発生とパンデミックの可能性に対応して、2020年1月17日に起動された。
ISARIC(International Severe Acute Respiratory and emerging Infections Consortium)は、111か国55の研究ネットワークによる国際連合で、2011年設立。感染症のアウトブレイク発生時に、臨床研究のエビデンスを生成、普及させている。
このISARICと世界保健機関(WHO)が共同で開発したのが、急性感染症のデータや生物学上のサンプルを収集するための国際的に標準化されたプロトコル、CCP(Clinical Characterisation Protocol)で、今回の研究では、これを使用してデータを分析している。
介護施設や精神病院で高い院内感染率
こうして判明したのは、全病院のCOVID-19患者の少なくとも11.1%が、入院後に感染したこと。院内感染したCOVID-19患者の割合は、第1波における入院患者のピークから大分経った2020年5月中旬にも、16〜20%に増加した。
第1波で入院した患者のうち院内感染者は推定およそ5700〜1万2000人だが、診断前に退院した人もいるため、過小評価した数値と考えられる。
救急、一般診療の病院(9.7%)に比べて、介護施設病院(61.9%)や精神病院(67.5%)で院内感染者の割合が高かった。
第1波で院内感染率が高かった理由としては、隔離設備が限られた病院に多くの患者が入院した、初期には迅速で信頼性の高い検査方法が十分に利用できなかった、病気の知見が乏しかった、個人用防護具が不十分など数多い。1年経って、院内感染率はかなり低下したが、第1波で高かった理由を精査して、病院が忌避されることのないようにする必要があると研究グループは指摘している。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01786-4/fulltext