血液検査と生検による前立腺がんのスクリーニングにおいて、従来のPSA(前立腺特異抗原)検査の代わりに新たに開発された血液検査方法を用いて、さらにMRI(磁気共鳴画像法)検査を加えると、従来と同等の検出能力を維持しつつ過剰検出を大幅に減らして、検査の質を高めることができるという報告があった。
カロリンスカ研究所をはじめとするスウェーデンの研究グループが、腫瘍学の専門誌『Lancet Oncology』で2021年8月に発表した。
PSA検査に比べて生検数が低減される
「STHLM3(Stockholm3)」と呼ばれるこの新たな血液検査法は、同じカロリンスカ研究所の研究グループが開発したもので、PSAやhK2(ヒト腺性カリクレイン2)などの血中タンパク質バイオマーカー、遺伝子多型、その他の要素(年齢や家族、病歴など)を組み合わせて、前立腺がんのリスクを数値化して推定する。
前立腺がんの検査には通常、PSA検査が使用されるが、偽陽性率が高く、不必要な生検につながっていることが課題とされる。
研究グループは既に数年前、STHLM3が従来のPSA検査と比べて、同等の検出感度を維持しつつ、生検数を3分の2に低減できることを証明している。
研究グループはさらにPSA検査の後に従来の生検を行う代わりに、MRI検査により対象を絞った生検を行うことで過剰診断を大幅に減らせるという大規模ランダム化比較試験の結果を医学誌『The New England Journal of Medicine』で発表している。
この試験(「STHLM3-MRI」と呼ばれる)は、ストックホルム県の一般男性1万3000人近く(50〜74歳)を対象として2018〜2021年に行われた。
試験ではPSA検査に加えてSTHLM3検査も実施。高リスクと判定されたおよそ2300人を、通常の生検を行うグループとMRI検査により標的を絞った生検を行うグループに無作為に分けて結果を比べた。
今回の発表は、両方の血液検査結果とその後のMRIおよび生検の結果を分析して、STHLM3検査の効果を評価したものとなる。
MRI検査の低減につながる
こうして判明したのは、STHLM3検査を実施するとリスクの低い微小腫瘍の検出を防ぐことができて、MRI検査数を3分の2に低減できること。さらに、STHLM3とMRI検査により対象を絞った生検を組み合わせることで、従来のPSAと生検を組み合わせた場合と比べて、重大ながんの検出率を高めながら、低リスクがんの検出率を下げて、要した生検数を減らせた。
研究グループは、MRI検査数が少なくて済むことは医療体制にとって大きな利点と指摘。STHLM3とMRI検査の組み合わせによって効率的で安全な前立腺がんスクリーニングのツールになるのではないかと期待している。
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(21)00348-X/fulltext
https://news.ki.se/new-blood-test-improves-prostate-cancer-screening