東邦大学、杏林大学、大阪公立大学の研究グループが、潰瘍性大腸炎とクローン病の全国疫学調査を行い、2023年時点の有病者数を推計した。潰瘍性大腸炎は316,900人(95%信頼区間:223,900~409,900)、クローン病は95,700人(61,100~130,400)と見積もられた。これは2015年調査(潰瘍性大腸炎:約220,000人、クローン病:約71,000人)と比べ、いずれも約1.4倍の増加である。
人口10万人あたりの年間有病率は潰瘍性大腸炎254.8人(男性297.5人、女性214.4人)、クローン病77.0人(男性112.9人、女性43.0人)であった。両疾患とも長期的に増加傾向にあることが示され、医療資源配分や診療体制整備において重要なデータとなる。研究チームは、今後も継続的な全国疫学調査により疾病負担を把握し、保健医療施策に反映させる必要性を強調している。
- 発表元→ 東邦大学/杏林大学/大阪公立大学
- 発表日→ 2025年9月19日
- 対象疾患→ 潰瘍性大腸炎、クローン病(炎症性腸疾患)
- 研究の背景→ 難治性炎症性腸疾患は再燃と寛解を繰り返し、1991年以降増加傾向が報告されてきた
- 調査手法→ 全国病院12,153診療科から層化無作為抽出で3,583診療科を選定。最終的に1,798診療科から回答を得て推計(回答率50.8%)
- 主要結果→ 潰瘍性大腸炎:約316,900人/クローン病:約95,700人。いずれも2015年比で約1.4倍増加
- 年間有病率→ 潰瘍性大腸炎:254.8人/10万人(男性297.5人、女性214.4人)/クローン病:77.0人/10万人(男性112.9人、女性43.0人)
- 臨床的含意→ 軽症例も含む実態把握により、診療体制や医療政策に資するデータ。患者増加に対応した体制整備が必要
- 制限事項→ 回答率50.8%であり、施設特性による偏りの可能性あり
- 次のステップ→ 疾病負担の継続的把握、保健施策への反映、医療経済影響の評価
★★★★☆
国内の炎症性腸疾患の疾病負担を最新の大規模データで提示した意義は大きい。医療政策や診療体制整備に直結する基盤情報である。ただし、推計値である点と回答率の限界は留意が必要。
