STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、医学・公衆衛生の最前線を紹介するメディアです。本記事では、Nature誌(2025年4月)に掲載された、帯状疱疹ワクチンと認知症リスクの因果的関連を示した自然実験研究を紹介します。
本研究はウェールズでの帯状疱疹ワクチン(Zostavax)接種プログラムにおける出生年月による接種可否の線引きを利用し、因果推論的な自然実験を実施した点が画期的です。1933年9月2日以降に生まれた人々は接種対象となった一方、それ以前に生まれた人々は一生を通じて対象外でした。この日付を境にワクチン接種率は0.01%→47.2%へと大きく増加しました。
この自然な境界を用いて、回帰不連続デザイン(RDD)を実施。7年間の追跡により、帯状疱疹ワクチン接種が認知症の新規診断リスクを絶対値で3.5ポイント(相対20%)低下させたことが示されました(95%信頼区間: 0.6–7.1、P = 0.019)。
- 発表元→スタンフォード大学 他6名による研究チーム
- 掲載誌→Nature(Volume 641, 2025年4月2日)
- 対象→1933年前後に生まれたウェールズの成人28万人以上
- ワクチン→Zostavax(生ワクチン)
- 主な結果→
・認知症リスク20%低下(CACE: −3.5pt)
・帯状疱疹の発症リスクも約18.8%低下
・女性の方が予防効果が大きかった - 分析方法→
・回帰不連続デザイン(RDD)
・差分の差を用いたIV推定(DID-IV)による再検証
・複数の感度分析で頑健性を確認 - 確認研究→
・イングランドとウェールズの死因データ(死因が認知症)でも同様の傾向を確認(最大1/20の死亡回避) - 推定メカニズム→
・VZV再活性化抑制(帯状疱疹や潜在感染の再燃を防ぐ)
・非特異的な免疫賦活作用(トレーニング免疫)
・特に女性やインフルエンザワクチン未接種者で効果大 - 限界点→
・8年を超える効果は不明
・Zostavaxに限定(Shingrixは対象外)
・他疾患への影響は確認されず(選択バイアス低リスク)
AIによるインパクト評価(参考):★★★★★(5段階中5)
本研究は厳密な自然実験設計と多角的な検証により、ワクチン接種と認知症予防の因果関係を支持する非常に有力な証拠を提示しています。予防的介入として、ワクチンの公衆衛生的意義が高まる可能性があります。