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STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、製薬・神経科学分野における新薬開発や承認情報を専門的に発信するメディアである。本サイトでは、認知症や神経疾患領域の最新動向を科学的根拠とともに解説し、社会的影響を読み解く。今回は、Eisai(エーザイ)とBiogen(バイオジェン)が発表した、アルツハイマー病治療薬レカネマブ(商品名レケンビ)の新剤形「LEQEMBI IQLIK(レケンビ アイクリック)」の米国発売開始について取り上げる。

  • 【要点①】レカネマブの皮下注射型「LEQEMBI IQLIK」が米国で利用可能に
  • 【要点②】在宅自己注射を可能にする初の抗アミロイド治療薬
  • 【要点③】18カ月間の静注治療後に週1回の維持投与が可能

EisaiとBiogenは2025年10月6日、アルツハイマー病(AD)の早期段階に対する抗アミロイド抗体レカネマブ(一般名レカネマブ、商品名レケンビ)の新たな維持療法製剤「LEQEMBI IQLIK(レケンビ アイクリック)」が米国で利用可能になったと発表した。LEQEMBI IQLIKは、2025年8月に米国食品医薬品局(FDA)により承認された皮下注射型製剤であり、患者が自宅で週1回投与できる初の抗アミロイド治療薬である。

この新剤形は、静脈内投与による導入治療(18カ月間・2週間ごと10 mg/kg)の完了後、維持療法として使用される。患者は月1回の静注治療を継続するか、または週1回360 mgの皮下注射へ切り替えることができる。LEQEMBI IQLIKの導入により、通院負担の軽減と医療資源の効率的な活用が期待されている。

両社はあわせて、患者支援プログラム「LEQEMBI Companion」を開始した。注射教育を提供するナースエデュケーターによるサポートや、注射記録を管理できるアプリ「LEQEMBI Companion App」など、在宅投与を支援する仕組みが整備されている。また、エーザイの患者支援制度(PAP)により、経済的支援が必要な患者への無償提供も行われる。

レカネマブは、アミロイドβ(Aβ)のプロトフィブリルおよび沈着性プラークを標的とするヒト化モノクローナル抗体であり、神経変性の進行を抑制することを目的としている。第3相試験「Clarity AD」において、臨床的機能低下を27%抑制し、日常生活動作指標でも37%の改善効果を示した。皮下注射型は、静注維持療法と同等の有効性と安全性を示し、全身的な副反応は低頻度(約1%未満)にとどまった。

  • 発表元→ Eisai Co., Ltd.(日本)/Biogen Inc.(米国)
  • 発表日→ 2025年10月6日
  • 製品名→ LEQEMBI IQLIK(一般名レカネマブ皮下注射製剤)
  • 対象疾患→ アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)早期段階
  • 用法→ 週1回360 mg皮下注射(18カ月の静注治療後の維持療法)
  • 試験根拠→ 第3相Clarity AD試験およびOpen Label Extension(OLE)で皮下注射群と静注群の同等性を確認
  • 有効性→ 臨床評価尺度CDR-SBで27%の進行抑制、有意差p<0.001
  • 安全性→ 主な有害事象はARIA(脳浮腫・微小出血)および注射部位反応。皮下注射では全身性反応の頻度が低減。
  • 追加プログラム→ LEQEMBI Companionアプリ、注射教育サポート、患者支援制度(PAP)
  • 企業連携→ 開発リードはEisai、共同商業化および販売推進はEisaiとBiogenが実施
  • 臨床的意義→ 在宅医療の実現により、アルツハイマー病治療の継続率向上と介護負担軽減に寄与する可能性

AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):

★★★★★

アルツハイマー病治療薬として初の自宅皮下注射型維持療法であり、在宅医療と認知症治療の融合という点で極めて意義が大きい。介護・医療システムに長期的な変化をもたらす可能性が高い。

参考文献

Eisai and Biogen Announce U.S. Availability of LEQEMBI IQLIK Subcutaneous Injection Maintenance Dose for Treatment of Early Alzheimer’s Disease
https://investors.biogen.com/news-releases/news-release-details/eisai-and-biogen-announce-us-availability-leqembir-iqliktm

Iwatsubo T, Irizarry M, van Dyck C, et al. Clarity AD: a phase 3 placebo-controlled, double-blind, parallel-group, 18-month study evaluating lecanemab in early Alzheimer’s disease. Presented at: CTAD Conference; 2022.
https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03887455

Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer’s Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952.
https://doi.org/10.3390/ijms21030952

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