STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、製薬業界における患者アクセス・価格改革の動向を追う。今回は、米アムジェン(Amgen)が開始した新たな直接販売プログラム「AmgenNow」について紹介します。
- 【要点①】アムジェンがPCSK9阻害薬「Repatha」の直接販売を米国で開始
- 【要点②】保険の有無を問わず、従来価格から約60%引き下げ
- 【要点③】患者が医療保険制度を介さずに購入可能に―価格透明化の象徴的試み
2025年10月6日、アムジェン(Amgen Inc.)は、米国で新しい直接販売プログラム「AmgenNow」を開始し、PCSK9阻害薬Repatha(一般名:エボロクマブ/evolocumab)の販売を開始したと発表しました。
このプログラムを通じて、Repathaは1か月あたり239ドル(約60%割引)の価格で提供されます。これは、先進7カ国(G7)内で最も低い価格水準であり、米国患者向けに初めて直接提供される形となります。対象は無保険者や高額免責保険加入者、自己負担希望者など幅広く、メディケアやメディケイドなどの公的保険利用者も利用可能です。
同社はこの取り組みを、米国政府(トランプ政権下)の「医薬品価格引き下げ」政策の流れに沿うものと位置づけ、保険会社の事前承認(プライアーオーソライゼーション)や段階的治療(ステップセラピー)要件を排除した形でアクセスを容易にしています。
アムジェンのグローバル商業部門担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、マード・ゴードン氏は「Repathaはすでに世界で500万人以上の患者を支援している。AmgenNowは、これまで薬に手が届かなかった患者に新しい選択肢を提供する仕組みだ」とコメントしています。
RepathaはPCSK9(プロプロテインコンバターゼ・サブチリシン/ケキシン型9)を阻害するヒトモノクローナル抗体で、LDLコレステロール(LDL-C)を低下させる作用を持ちます。近年発表された第III相VESALIUS-CV試験では、心筋梗塞や脳卒中の既往がない患者群でも主要心血管イベント(MACE)リスクを有意に低下させることが示されました。
Repathaは現在、74か国以上で承認されており、日本、カナダ、EU加盟国などでも販売されています。アムジェンは今後、他製品へのAmgenNow展開も検討しています。
- 発表元→ アムジェン(Amgen Inc.)
- 発表日→ 2025年10月6日(米国時間)
- プログラム名→ AmgenNow(アムジェンナウ)
- 対象製品→ Repatha(一般名:エボロクマブ)
- 価格→ 月額239ドル(従来の米国リスト価格から約60%引き下げ)
- 対象者→ 保険の有無を問わず全ての成人患者(無保険者、高免責保険者、自己負担希望者を含む)
- 特徴→ 医療保険を介さずに直接購入可能/事前承認不要
- 臨床試験→ 第III相 VESALIUS-CV試験:主要心血管イベントを有意に抑制
- 主な副作用→ 鼻咽頭炎、上気道感染、インフルエンザ、注射部位反応
- 販売地域→ 米国(初導入)、74か国以上で承認済み
AIによる医療経済インパクト評価(参考):
★★★★☆
直接販売による価格透明化は、米国医薬品市場の構造改革の象徴的な動きであり、特に高脂血症や心血管疾患領域においてアクセス格差を縮小する可能性を持つ。保険制度外の価格設定モデルとして、他社の追随も予想される。
参考文献
Amgen. “Amgen Makes Repatha Available Through AmgenNow, a Direct-to-Patient Program in the U.S.”
https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2025/10/amgen-makes-repatha-available-through-amgennow-a-directtopatient-program-in-the-us
Sabatine MS et al. New England Journal of Medicine. 2017;376:1713–1722.
