STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、免疫疾患と消化器疾患の最新治療に注目する医療ニュースメディアです。今回は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)の潰瘍性大腸炎治療薬「トレムフィア(Tremfya, 有効成分:グセルクマブ)」に関する新たな第3相試験結果を紹介します。
- 【要点①】トレムフィアが潰瘍性大腸炎で第3相ASTRO試験を48週まで完了、持続的な臨床的および内視鏡的奏効を確認
- 【要点②】完全皮下注射レジメンで臨床寛解率36.7%、内視鏡的寛解率25.9%を達成
- 【要点③】生物学的製剤未使用および既使用の両群で有効性を示す
2025年10月7日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)は、潰瘍性大腸炎(UC)を対象とした第3相ASTRO試験の48週時点データを発表しました。この試験では、皮下注射(SC)による誘導および維持療法を評価し、同剤が臨床的および内視鏡的指標で持続的かつ臨床的に意味のある改善をもたらしたことが示されました。
トレムフィアはIL-23阻害作用とCD64結合活性を併せ持つ唯一の二重作用モノクローナル抗体で、IL-23を分泌する単球や樹状細胞上の受容体に結合し、炎症を根源から抑制するよう設計されています。
ASTRO試験では、中等度から重度の活動性UC患者418例を対象に、以下の治療群で比較が行われました。
- トレムフィア400mg SC誘導後 → 100mgを8週ごとに皮下注射(q8w)
- トレムフィア400mg SC誘導後 → 200mgを4週ごとに皮下注射(q4w)
- プラセボ群
48週時点の結果は以下の通りです。
評価項目 | トレムフィア100mg q8w | トレムフィア200mg q4w | プラセボ |
---|---|---|---|
臨床的寛解 | 36.7% | 42.9% | 7.2% |
内視鏡的改善 | 44.6% | 47.1% | 11.5% |
内視鏡的寛解 | 25.9% | 26.4% | 5% |
症状寛解 | 47.5% | 53.6% | 14.4% |
さらに、事前に定義されたサブグループ解析では、生物学的製剤またはJAK阻害薬の未使用群・既使用群の両方で有効性が確認されました。安全性についても、これまでに確立されたトレムフィアの安全性プロファイルと一貫していました。
ミラノのサン・ラファエーレ病院 シルビオ・ダネーゼ教授は、「完全皮下注射レジメンによって、患者が自宅で自己投与を行いながらも、臨床的・内視鏡的な改善を1年間維持できたことは大きな前進だ」と述べています。
また、ジョンソン・エンド・ジョンソン イノベーティブ・メディスン免疫学部門のエシ・ラムーゼ=スミス博士は、「トレムフィアはクローン病と潰瘍性大腸炎の両方で皮下注射による誘導療法を提供できる唯一のIL-23阻害薬であり、治療選択肢を拡大する重要な進展」とコメントしています。
ASTRO試験の概要(NCT05528510)
- 試験デザイン→ 無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較・多施設共同・第3相試験
- 対象→ 中等度〜重度の活動性潰瘍性大腸炎患者418例
- 治療→ 皮下注射400mgを0、4、8週に投与(誘導期)、以後100mg(8週毎)または200mg(4週毎)を維持投与
- 主要評価項目→ 臨床的寛解率、内視鏡的改善、症状スコアの改善
- 結果→ 48週時点で有意な寛解率を達成(p<0.001)
- 安全性→ 既知の安全性プロファイルと一致、重大な新規リスクなし
トレムフィアと潰瘍性大腸炎治療の新たな展開
トレムフィアは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した完全ヒト型IL-23阻害抗体で、従来の静注導入療法に加えて完全皮下注射型の誘導・維持療法を実現した初のIL-23阻害薬です。FDAおよび欧州委員会(EC)からクローン病および潰瘍性大腸炎に対する両モード(IV/SC)で承認を受けています。
この結果により、患者と医療従事者は自宅で自己投与できる治療選択肢を持つことが可能となり、利便性と治療継続性の両面で大きな意義を持つとされています。
AIによる臨床・市場インパクト評価(参考)
★★★★★
トレムフィアの完全皮下注射レジメンは、IL-23阻害薬カテゴリーにおける新たな標準となる可能性があります。注射のみで1年間にわたり臨床・内視鏡的改善を維持したことは、患者のQOL向上と医療アクセスの拡大につながる重要な成果です。
参考文献
Johnson & Johnson. “Tremfya (guselkumab) is first and only IL-23 inhibitor to demonstrate sustained clinical and endoscopic outcomes with a fully subcutaneous regimen through 48 weeks in ulcerative colitis.”
https://www.jnj.com/media-center/press-releases/tremfya-guselkumab-is-first-and-only-il-23-inhibitor-to-demonstrate-sustained-clinical-and-endoscopic-outcomes-with-a-fully-subcutaneous-regimen-through-48-weeks-in-ulcerative-colitis
ClinicalTrials.gov: NCT05528510 — A Study of Guselkumab Therapy in Participants With Moderately to Severely Active Ulcerative Colitis (ASTRO).
