STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学・医療・テクノロジーの分野で世界的な研究成果を伝えるメディアである。今回は、Bristol Myers Squibb(BMS)と米国のバイオ医薬企業SystImmune社が共同で発表した、二重特異性抗体薬物複合体 イザロントマブ・ブレンジテカン(iza-bren, BL-B01D1)の初のグローバル第1相試験結果を紹介する。発表は2025年10月17日、ベルリンで開催された 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2025における口頭発表で行われた。
- 【要点①】EGFR×HER3を標的とする新規二重特異性ADC「iza-bren」が初のグローバル臨床結果を報告。
- 【要点②】EGFR変異の有無を問わず、進行固形がん患者で55%の奏効率を確認。
- 【要点③】重篤な間質性肺疾患(ILD)の発現はなく、安全性は概ね良好。
SystImmuneとBMSは共同声明で、グローバル第1相試験「US-Lung-101」(NCT05983432)の中間解析結果を発表した。本試験は、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)およびその他の進行固形がん患者を対象に、EGFRおよびHER3を同時に標的とする抗体薬物複合体「iza-bren」の安全性と有効性を評価したものである。
解析時点(2025年7月23日)で、107名の進行がん患者が治療を受けた。そのうち、2.5mg/kgを3週間ごと(1日目と8日目)に投与された20人中55%(11人)が確認された奏効を示し、中央値無増悪生存期間(PFS)は5.4か月だった。特に、EGFR変異陽性NSCLC患者10人中3人、変異陰性患者4人中3人で腫瘍縮小が確認された。
試験概要と結果
- 試験名→ US-Lung-101(NCT05983432)
- フェーズ→ 第1相、多施設共同、国際試験
- 対象→ 進行または切除不能な非小細胞肺がん(NSCLC)およびその他の固形がん患者(EGFR変異有無を問わず)
- 投与法→ 2.5mg/kg、Day1およびDay8を1サイクル(21日間)として継続投与
- 主要評価項目→ 安全性・忍容性
- 副次評価項目→ 奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、疾患制御率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、薬物動態(PK)
- 結果(2025年7月23日時点)→
- 確認された奏効率:55%(11/20例)
- 中央値PFS:5.4か月
- EGFR変異陽性群:30%(3/10)
- EGFR野生型群:75%(3/4)
- 安全性→ 主な副作用は血液毒性(好中球減少など)であり、標準的な治療介入で管理可能。ILD(間質性肺疾患)の発現はゼロ。新たな安全性上の懸念なし。
- 今後の展開→ 進行三陰性乳がん(TNBC)、EGFR変異陽性NSCLC、尿路上皮がんを対象とした第Ⅲ相登録試験(IZABRIGHTプログラム)が進行中。
専門家コメント
SystImmune 最高医療責任者 Jonathan Cheng医師: 「中国での初期試験で見られた有効性が、グローバル集団でも一貫して確認された。iza-brenは複数の腫瘍種で有望なADC候補であり、BMSとの協力により開発を加速していく。」
BMS腫瘍・血液・細胞治療部門開発責任者 Anne Kerber氏: 「この初期段階の結果は、治療困難ながん患者に対して新たな希望を示している。私たちは“first-in-class”の治療薬開発を通じて、より多くの患者の転帰改善を目指している。」
iza-brenとは
iza-bren(BL-B01D1)は、EGFR(上皮成長因子受容体)およびHER3(ヒト上皮成長因子受容体3)を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(bispecific ADC)である。両受容体を同時に遮断することで、がん細胞の増殖と生存シグナルを抑制するだけでなく、細胞内に取り込まれた薬物結合抗体がトポイソメラーゼI阻害剤(Topo1i)を放出し、DNA損傷を介して細胞死を誘導する仕組みを持つ。
このメカニズムは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に耐性を示す腫瘍にも有効である可能性が示唆されている。
AIによる情報のインパクト評価(参考)
★★★★★(非常に高い)
iza-brenは、EGFRおよびHER3の両経路を同時に遮断する初の二重特異性ADCとして、肺がん治療の新たな可能性を開くものである。安全性が良好で奏効率も高く、既存治療抵抗性のがん患者に対するブレークスルー候補薬として期待が高い。
参考文献
SystImmune, Inc. and Bristol Myers Squibb Announce First Global Phase I Results of Iza-bren, an EGFR x HER3 Bispecific Antibody-Drug Conjugate, in Patients with Advanced Solid Tumors at ESMO 2025 (発表日:2025年10月17日)
https://news.bms.com/news/corporate-financial/2025/SystImmune-Inc–and-Bristol-Myers-Squibb-Announce-First-Global-Phase-I-Results-of-Iza-bren-an-EGFR-x-HER3-Bispecific-Antibody-Drug-Conjugate-in-Patients-with-Advanced-Solid-Tumors-at-ESMO-2025/default.aspx
ClinicalTrials.gov: NCT05983432
SystImmune公式サイト: https://systimmune.com/
