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STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、がん免疫療法・分子標的治療の最新臨床成果を伝える医療科学メディアである。 今回は、メルク社(Merck & Co., Inc., MSD)およびエーザイ株式会社(Eisai)が2025年10月18日に発表した、 子宮体がん(進行・再発子宮内膜がん)に対する免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ(KEYTRUDA, ペムブロリズマブ)と チロシンキナーゼ阻害薬レンビマ(LENVIMA, レンバチニブ)の併用療法に関する第Ⅲ相試験KEYNOTE-775 / Study 309の5年追跡解析結果を紹介する。

  • 【要点①】免疫+分子標的併用療法が、5年生存率19.9%を達成し、化学療法群(7.7%)を大幅に上回る。
  • 【要点②】ミスマッチ修復正常(pMMR)群でも5年生存率16.7% vs 7.3%、中央値OS 18.0か月 vs 12.2か月。
  • 【要点③】有害事象プロファイルは既報と一致、新たな安全性シグナルなし。

本解析は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2025ベルリン大会にて発表された。 試験は、プラチナ製剤を含む既治療歴を持つ進行子宮体がん患者827例を対象とした無作為化第Ⅲ相試験で、 KEYTRUDA+LENVIMA併用療法群(n=411)化学療法群(n=416)を比較したものである。 治療選択化学療法としてドキソルビシンまたはパクリタキセルが用いられた。

主要結果(5年追跡データ)

  • 対象: 827例(pMMR 697例, dMMR 130例)
  • 主要評価項目: 全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)
  • pMMR群:
    • 5年OS率:KEYTRUDA+LENVIMA 16.7% vs 化学療法 7.3%
    • 中央値OS:18.0か月 vs 12.2か月(HR 0.70, 95% CI 0.60–0.83)
    • 5年PFS率:6.3% vs 2.1%
    • 客観的奏効率(ORR):32.4% vs 14.8%
  • 全体集団(All-Comers):
    • 5年OS率:19.9% vs 7.7%(HR 0.66, 95% CI 0.57–0.77)
    • 中央値OS:18.7か月 vs 11.9か月
    • 5年PFS率:9.8% vs 3.2%
    • ORR:33.8% vs 14.4%
  • dMMR群(参考):
    • 5年OS率:36.5% vs 9.8%
    • 中央値OS:31.9か月 vs 8.6か月
    • PFS中央値:14.8か月 vs 3.7か月

この結果は、2021年の主要解析(NEJM掲載、SGO年次総会発表)で示された初期データと整合しており、 免疫療法+TKI併用により長期的生存が維持されることを明確に示した。

安全性

併用群では治療関連有害事象(TRAEs)が97.3%に発生し、 KEYTRUDAおよび/またはLENVIMAの中止率は40.1%(両剤中止は16%)であった。 主な有害事象(発現率20%以上)は以下の通り:

  • 高血圧(61.8%)
  • 甲状腺機能低下症(55.7%)
  • 下痢(43.3%)
  • 悪心(40.1%)
  • 食欲低下(37.9%)
  • 疲労(28.8%)
  • 蛋白尿(27.6%)
  • 関節痛(23.9%)
  • 手足症候群(20.7%)

長期追跡でも新たな安全性シグナルは認められず、プロファイルは初期報告と一貫していた。

専門家コメント

Dr. Vicky Makker(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター):
「ミスマッチ修復正常(pMMR)腫瘍は免疫単剤では治療が難しいとされていますが、 KEYTRUDA+LENVIMAの5年データは、免疫療法と分子標的薬の併用が長期的な生存改善をもたらすことを明確に示しています。」

Dr. Gregory Lubiniecki(メルク社臨床開発担当副社長):
「今回の結果は、進行子宮体がんにおける治療戦略を根本的に変える可能性を持ちます。 我々の取り組みは、女性特有がんの領域で持続的に意義ある選択肢を提供することを目指しています。」

背景と臨床的意義

子宮体がんは世界で女性がんの第6位を占め、進行・再発症例では予後が不良である。 特にpMMR(ミスマッチ修復正常)腫瘍は免疫応答性が低く、従来治療では治療抵抗性を示す。 KEYNOTE-775試験の結果は、免疫療法+TKIの併用によって難治群にも持続的な生存改善が得られることを証明し、 子宮体がん治療の新たな標準を確立するものである。

AIによる情報のインパクト評価(参考)

★★★★★(非常に高い)

本結果は、婦人科がん領域における最長追跡データを提供し、 免疫療法+分子標的治療の持続的有効性を裏付けた極めて重要なエビデンスである。 特にpMMR症例での生存利益は、免疫抵抗性腫瘍群に対する治療戦略を再定義するものである。

参考文献

Merck & Eisai. “KEYTRUDA(pembrolizumab) Plus LENVIMA(lenvatinib) Demonstrates Durable 5-Year Survival Benefit Versus Chemotherapy for Patients With Advanced Endometrial Carcinoma Following One Prior Platinum-Based Regimen.” (発表日:2025年10月18日)
https://www.merck.com/news/keytruda-pembrolizumab-plus-lenvima-lenvatinib-demonstrates-durable-5-year-survival-benefit-versus-chemotherapy-for-patients-with-advanced-endometrial-carcinoma-following-one-prior-pla/

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