STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学技術・医療・ライフサイエンスの分野における研究成果を、中立的かつ正確に紹介するニュースメディアである。ロシュ(Roche)は、第3相試験「evERA乳がん試験」において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)ギレデストラント(giredestrant)とエベロリムス(everolimus)の併用療法が、エストロゲン受容体陽性(ER+)進行乳がん患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したと発表した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】ギレデストラント+エベロリムス併用療法が、標準治療+エベロリムスに比べてPFSを有意に改善。
- 【要点②】ITT集団で44%、ESR1遺伝子変異集団で62%の疾患進行または死亡リスク減少を達成。
- 【要点③】安全性は良好で、新たな安全性シグナル(光視症など)は認められなかった。
第3相「evERA試験」は、CDK4/6阻害剤および内分泌療法による前治療を受けたER陽性・HER2陰性の局所進行または転移性乳がん患者を対象とした。ギレデストラントは、エストロゲン受容体を選択的に分解・遮断する次世代経口SERDであり、エベロリムスとの併用により内分泌抵抗性を克服する新たな戦略が検証された。
- 発表元→ Roche
- 発表日→ 2025年10月18日
- 試験名→ 第3相 evERA乳がん試験(NCT05306340)
- 対象疾患→ エストロゲン受容体陽性(ER+)・HER2陰性の局所進行または転移性乳がん
- 研究の背景→ CDK4/6阻害剤後の内分泌抵抗性は治療上の大きな課題であり、新たな経口併用療法の開発が進められている。
- 試験デザイン→ 無作為化・多施設共同・オープンラベル試験。比較群は標準的内分泌療法+エベロリムス。
- 主要評価項目→ 無増悪生存期間(PFS)をITT集団およびESR1変異集団で評価。
- 主要結果→ ・ITT集団:中央値PFS 8.77カ月 vs 5.49カ月(HR=0.56、p<0.0001)
・ESR1変異集団:中央値PFS 9.99カ月 vs 5.45カ月(HR=0.38、p<0.0001)
・全体生存(OS)は未成熟ながら、両集団で良好な傾向を示した(ITT HR=0.69、ESR1変異 HR=0.62)。 - 安全性→ 既知の安全性プロファイルと一致し、新たな懸念は報告されなかった。光視症などの眼関連事象も観察されず。
- 臨床的意義→ 経口SERD+mTOR阻害剤併用は、CDK4/6阻害剤後の治療抵抗性乳がんに対する新たな標準治療候補として期待される。
- 制限事項→ 全生存データは未成熟であり、長期的有効性の確認が今後の課題。
- 次のステップ→ 各国の規制当局へのデータ提出を通じて、承認申請を進める予定。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★★
内分泌抵抗性乳がん治療における新たな経口選択的エストロゲン受容体分解薬の有効性を確立しうる成果であり、臨床導入への期待が高い。
参考文献
Roche’s phase III evERA data showed giredestrant significantly improved progression-free survival in people with ER-positive advanced breast cancer
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-10-18
ClinicalTrials.gov:evERA Breast Cancer(NCT05306340)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT05306340
Mayer E, et al. Primary results of the Phase III evERA BC trial. Presented at: ESMO Congress 2025; Berlin, Germany. LBA #16.
