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第一三共は、抗TA-MUC1抗体薬物複合体DS-3939を用いた進行性固形がん患者を対象とする第1/2相臨床試験の用量漸増パートの結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で初めて発表した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- TA-MUC1を標的とする抗体薬物複合体(ADC)DS-3939の初の臨床データが報告された。
- 64名の進行性固形がん患者で、安全性と予備的有効性を評価。
- 完全奏効1例、部分奏効10例を確認。間質性肺疾患(ILD)に関連する重篤例も報告。
第一三共が開発中のDS-3939は、腫瘍特異的糖鎖を有する膜貫通型糖タンパク質TA-MUC1を標的とする抗体薬物複合体である。TA-MUC1は多くの上皮性がんで過剰発現しているが、これを標的とする承認済み治療薬は存在しない。今回の結果は、早期の安全性および有効性評価として意義がある一方で、間質性肺疾患(ILD)を含む有害事象の管理が今後の臨床開発における重要課題である。
- 発表元→ 第一三共
- 発表日→ 2025年10月20日
- 対象疾患→ 進行性固形がん(非小細胞肺がん、膵管腺がん、尿路上皮がん、卵巣がん、胆道がん、大腸がん、乳がん)
- 研究の背景→ TA-MUC1は多くの上皮がんで過剰発現しており、治療標的として期待されるが、これまで承認薬は存在していなかった。
- 試験デザイン→ 第1/2相試験。多地域(日本、アジア、欧州、北米)で実施。用量漸増パートで最大耐用量と推奨用量を評価。
- 一次エンドポイント→ 安全性および忍容性の確認。
- 二次エンドポイント→ 予備的有効性(完全奏効・部分奏効・病勢安定の割合)。
- 主要結果→ 完全奏効1例(卵巣がん)、部分奏効10例(卵巣がん5例、非小細胞肺がん4例、乳がん1例)、病勢安定39例。
- 安全性→ グレード3以上の有害事象は46.9%に発生。主な事象は好中球減少症(15.6%)、貧血(10.9%)、肺炎(4.7%)。ILDは7名(10.9%)に認められ、うち2名は後にグレード5(死亡)と判定。
- 臨床的含意→ TA-MUC1標的ADCとして初の臨床結果。多がん種での治療可能性を探索する初期的段階にある。
- 制限事項→ 少数例での解析であり、有効性・安全性ともに確証にはさらなる検証が必要。
- 次のステップ→ 用量展開パートへの登録を継続し、有効ながん種を特定して臨床開発を進める。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★☆☆
TA-MUC1を標的とするADCの臨床進展として意義があるが、ILDなど安全性課題が明確であり、慎重な開発が求められる段階である。
参考文献
第一三共:欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で発表した抗体薬物複合体DS-3939の固形がん患者を対象とした第1/2相臨床試験データについて
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202510/20251020_J6.pdf

